こんどの日曜日、バンブーロッドを持って行きます
白戸さんから電話があった。バンブーロッドが数本完成したので、こんどの日曜日、そちらにバンブーロッドを直接持って行きたいとの電話だった。
そういえば、ずっと白戸さんに会っていないな。最近はロッドも宅配便で来ていた。でも白戸さんが最初にバンブーロッドを見せに来た時は、私はてっきり車で来ると思っていたら、わざわざ神奈川県から大型のスクーターで来てくれた。スクーターの後ろに、ケースに入れたバンブーロッドが何本かくくりつけてあったのを、季節は忘れたが印象的に覚えている。
「本庄あたりに入ると急に風が冷たくなりますね」。やはり乗用車では分からない自然の感覚がスクーターに乗るとひしひしと体に染み込むのだろうな。私の二番目の姉も神奈川県にいる。朝に神奈川を出ても、松井田に着く時はたいがい午前11時か午後2時ごろになる。家庭があるから大変なんだろうな。姉はもちろん電車で来るのである。そんなところから白戸さんが電車で来てくれると言うのである。
私は「電車でわざわざバンブーロッドを持ってこなくも宅配便で送れば結構ですよ」と言ったが、「小板橋さんのお店にある他の方のバンブーも久し振りに見たいもので」と白戸さんは言う。私は「ほんとに良いんですか。こちらは朝晩冷えこむ季節になりましたよ」と言った。
白戸さんが風邪気味だと話していたこともあり、私は心配だった。「何時ごろ来ますか。」。「午前10時ごろ行きたいと思います。」。「では高崎駅に着いたら電話をください。松井田駅まで車で迎えに行きますから。」と、電話を切った。
午前10時ということは朝何時に起きるのだろうかと、余分な心配までしてしまった。新幹線で来れば早いよとあとで知人が言っていたが、私はそのとき新幹線と言う手があることをまったく気がつかなかったのです。
さっそくバンブーロッドを見せてもらった
次の日曜日、午前9時過ぎに「今高崎駅に着きました。」と電話があった。ずいぶん早いな。これは新幹線で来たのかな。とりあえず松井田駅までレッツゴー。
白戸さんと会うのは久しぶりだ。顔が分かるかな、なんて思いながら駅に行く。白戸さんがビニールに包まれたバンブーロッドを少し上げて、にこにこしながら一番最後に階段を降りてきた。
どうもどうも久しぶりです。今日はお店の前の旧中山道が身体障害者の皆さんのマラソン大会で通行止めなので、少し歩いてもらいます。悪いですね。(身体障害者の選手と健常者が助け合い何キロか歩く速度でマラソンをします。もう15回にもなるそうです。NHKのウオーキングの番組で講師をしていた増田明美さんが毎回参加しています。県外からも大勢参加しています。お祭りやパレードほど応援をしている人は少ないが、参加している選手は元気いっぱいで、何だかこっちまで元気をもらったような感じがします。)
お店に着いて、一服することなしに、さっそくバンブーロッドを見せてもらった。いつも感心するのですが、白戸さんは何ヶ所か、いつも新しいことをして来てくれる。今回のスライドシートも面白いし、フェルールキャップも今回が初めてだ。普段そういう物はついていないため、ついしまう時に「小板橋さんキャップ、キャップ」と言われてしまう。キャップも手が込んでいてセンスが良い。竿袋はおふくろさんが作ってくれるらしい。
私が「竿袋の入り口は2ヶ所に分かれていないのですか」と聞くと、おふくろさんが「面倒くさがって、やってくれないんですよ。」ということだった。そうしてある方がいいことは白戸さんも充分分かっているが、自分でやろうとするとおふくろさんがミシンを壊されると思うらしく、駄目らしい。私もそれ以上のことは言えなかった。
白戸さんのえらいところは、前回指摘した箇所をきちんと意識して作ってあることだ。指摘してなんて偉そうなことを言ってすいません。
安いバンブーロッドだから、なんて思われたくないことと、お客様にがっかりさせたくないため、白戸さんが毎回色々工夫して腕を上げているからで、じつは本人が一番びっくりしているようです。でもほんとにパーツなども良くなっているし、ロッド製作の本数をこなすせいか、毎回良い感じになってくる。私は本人を前にあまり褒めることはしないし、まだまだとはっぱをかけているところです。完成するたびに良い感じですが、これからですから見守ってやってください。
検品が済んでちょうどお昼の時間になった。せっかく神奈川県から電車でバンブーを持って来てくれたので、今日は私がお昼を奮発しようと思った。白戸さんが好きかどうかわからないが、松井田にはなかったような洒落たおとうふ専門店が最近できたので、電話を入れると、今日は予約の他は全部お断りしているんですと言われてしまった。
トンキンケーンはオーブンを使うが
真竹や女竹は国産だから火鉢で。
あれー、弱ったな。残念。松井田にもこんなお店があったんですか、と驚かそうと思ったのに。
しようがないので、他の美味しい店はどこかと考えた。サミーのハンバーグか、上の家のカツ丼か、すかやのそばか。白戸さんに聞くとそばがいいと言うことで、すかやのそばに決まり車で出かけた。エビ天付きの盛りそばを白戸さんは注文した。私は盛りそばにミニセットのトンカツ丼をいただいた。
店のなかを見る限りそんなに混んでいないのに、前に来ていた4人連れのお客さんが注文をするので「すいませんすいません」を何回繰り返してもお店の人が出てこない。私はそれを見ていて、地元のお店なので何だかこっちまでがお客さんに申しわけがないような気分になって来た。
ようやく奥からお店の嫁さんらしき人が、慌てるでもなく淡々と応対をしていたのが、やはり田舎なのかなと思う。そんなことを横目で見ながら、白戸さんに「今朝何時に家を出て来たのですか」と聞くと、「朝5時半に出てきました。」と言う。
新幹線で来たのかなと思っていたら鈍行だった。なんとそんな時間に大変だったでしょう。白戸さんは「朝早いのは平気です。学生のころ山岳をやっていたので、4時間5時間歩くのも苦になりません。」と言った。
信越線で松井田に来る途中、電車が2両でした、良いですね。でも椅子が合い向かいで、向かいに座っていた小さい子が白戸さんのバンブーロッドをどのくらいの強さかわからないが、とにかく蹴ったらしい。それが分かっていたのに親は注意しなかったと話していた。やめるように言ったのですかと聞くと、おっかないおじさんだと思われるのがいやで黙っていた、と白戸さんは話した。
白戸さんは優しい人なんだな。ロッドはしっかり梱包してあるから異常は無かったが、弱った親だな。
もうひとつ、白戸さんは凄いなと思ったこと。「トンキンケーンは外国から来た竹だからオーブンを使いますが、真竹や女竹は国産だから火鉢で火入れをしています。真竹や女竹にオーブンは使っていませんよ。」と言っていた。
それは私には初耳だ。とても良いことだと思います。これはますます白戸ロッドが楽しみだ。
二人で妙義山に行った。
こういう奇岩の山は珍しいでしょう。
白戸さんとは年齢が近いせいか趣味も合うようだ。白戸さんは神社仏閣、美術舘めぐりが好きなんだそうだ。弱ったな。そう聞いてしまったので、私はいけない癖が出てきてしまい、すかやの近くにあるお宮さんへ、そのまま白戸さんを案内してしまった。
けっこう良いですね、なんて言うもんだから、もう止まらない。近くの不動寺にも案内してしまうと、白戸さんが心配して「お店は大丈夫ですか。」。私は「んー、シーズンオフだから。」なんて答えました。
「白戸さんは何時の電車で帰るんですか。午後3時5分ですか、じゃあちょっとまだ紅葉には早いけど妙義山に行っちゃいましょう」ということになり、妙義山にも行った。「こういう奇岩の山は珍しいでしょう。」。「凄いですね、中国の山水画の世界ですね。」…。
山岳部にいたせいか、白戸さんはやはり山が性に合うようで、気持が良さそうだ。眺めの良いところで車から下界を見ると、いつも見なれている私も天気が良かったこともあって気持が良かった。カメラを持ってくれば良かった、と白戸さんが何度も言っていた。白戸さんは一眼レフカメラを2台と他に2台持っている。でもデジカメはまだ持っていないんです、と言っていた。
二人で妙義神社と中之岳神社に行き、あの形容しがたいゴールドのとてつもない大きさのエビス様をラストに、電車の発車時刻ぎりぎりで松井田駅にスベリこんだ。
今回はなにか白戸さんのバンブーロツドの宣伝ぽくなってしまい、申しわけない。それにちょっとお店を留守にして申しわけない。
アンクルサム(群馬県安中市松井田町/電話027-393-2196)