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島崎 憲司郎
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今年もやってきました。
●初体験から3年目。今年は山の雪も多く、水量もまずまず。毎日、瀬ではバシャバシャと励んでいる。
●風が強くキャストも厳しいが、風は強い方が産卵行動は活発なようだ。キャストの練習と思えば何ともない。がんばればがんばる程応えてくれる気前イイヤツ。



Hankoya-Tera(福島県)
| マルタの雑誌 | 10:29 | - | trackbacks(0) |
中山道の釣り旅 第21回「〈日本のチベット〉上野村いまむかし」
 群馬県甘楽郡南牧村と多野郡上野村の境、塩之沢峠を抜ける湯ノ沢トンネル(3323m)が開通して、上野村はアンクルサムからだいぶ近くなった。



 まだトンネルが出来る前、上州漁協松井田地区の理事と県水産の人といっしょに、上野村へ行ったことがある。上野村のキャッチ・アンド・リリース区間がたいそう繁盛しているらしいので、上州漁協でも同じことができないか、という視察だった。フライショップをしている私に声がかかったのは、「おめいのやってるフライて言うやっだんベー。おめいが1番よく分かっているんだんベー。だから一緒に行った方が良いだんベー。」ということだった。

笑いたければ笑えば

 1台の車に4人が乗って、下仁田から上野村に向かった。ずいぶん細い山道を揺られていった。対向車が来たら危ない所も何ヶ所かあり急カーブもある。運転者がカーブでキュルキュルとハンドルを切るので、私の内臓は右へ行ったり左に行ったり、しまいには口数も少なくなってしまった。着くまでに我慢できるかどうかというくらいだった。

 やっと上野村の役場前に着き、車から下りる事が出来た。最初に上野村の組合長に挨拶をした。まだ若いとは聞いていたが本当に若い。すると横にいた上野村漁協の若い女の人が「私、アンクルサムさん知ってます。」といきなり言ってきたので、ビックリした。普通どこの漁協の事務所でも60代以上の女の人がどーんと構えている感じだが、組合長が若いとその取り巻きも若いようだ。でも声を掛けてくれて悪い気はしない。先までのつらい車酔いがどこかに飛んでいってしまった。

 その日は1年に1回、毎年やっているキャッチ・アンド・リリースのイベントの日だった。するとどこかで顔を見た面々が寄って来た。佐藤成史さんと里見栄正さんだ。やーしばらく。今日はなんだい。すると、「アンクルサムさん。」ではなく、「小板橋さん。」と声を掛けてくれた釣り人がいた。だれだろうと思い振り向くと、安中に住んでいる夫婦連れのお客さんだった。「毎年このイベントには参加しているんですよ。いつも1泊して皆の話を聞いたり、くじ引きをしたりして、とても楽しいですよ。」と、声を弾ませて話してくれた。

 里見さんとは年齢が同じなので、同じ時代を生きて来たと言う親近感がある。たまに取材などでスタッフやディレクターが里見さんといっしょにお店に寄ることがあるが、皆決まってある所を見る。私と里見さんが並んでいるのを見て、笑いだすのを堪えているのが2人には分かっている。2人の気持ちは、笑いたければ笑えば、の境地だ。頭が2人とも○○ているのです。



 脅かしたり持ち上げたり

 私は今から35年ぐらい前に初めて社会人になったとき、車関係の会社に就職した。こんなに内気な私が営業をすることになり、いったいどんなことになるやら、いつまでやれるか全く未知数だった。私は車の運転が好きではないから道もよく知らない。内気で道も良く分からない私が車の営業だなんて、人生どうなって行くのか不安で必死だった。

 会社には営業課が4つあり、どういうわけか私は1番成績がいつも良い課に所属することになった。私が上野村に3トントラックを売りに行くことになったので、道を知らない私は、「上野村へはどのように行けば良いんですか。」と課の先輩に聞いた。

 するとその少し癖のある先輩が、「上野村は日本のチベットと言って、物凄い山奥で道も狭く車がすれ違うのも大変で、かえって夜の方が対向車のライトが見えて危なくないんだ。行くだけで1日仕事になるぞ。車を崖に落とすな。無事に帰って来られるかどうか怪しいぞ。」と言った。いやな先輩に道を聞いたもんだ。するとまた違う先輩が、「上野村の手前の鬼石町は日本全国に石を売っているから、美人の嫁さんが多いんだ。よく見てきな。」と言った。脅かしたり、持ち上げたり、大変な先輩たちだった。

 御巣鷹の尾根に日航ジャンボ機が墜落してから道路が広くなったが、当時は本当に狭かった。おかげさまで新車の3トン半のロングボディーが売れて納車できたが、下取り車がものすごく古くて、ブレーキも甘く、帰り道が大変だったのを覚えている。そのころはまさか後でトンネルが出来て、上野村と松井田がこんなに近くなるとは思わなかった。それに私がフライショップをするなんて、ゆめゆめ思わなかったし、日航ジャンボ幾が落ちるなんてことも分からなかった。



 透き通った注射器

 当時、会社に上野村出身者の先輩がいて、そのお母さんが体を悪くして血液が必要になった。聞くと私の血液と同じで、直接上野村に行って私の血をあげないと駄目らしい。「お願いできるかい。」と頼まれたので、若かったし行きましょうと言うことになり、行った。病院に着くと、体のがっしりした白髪混じりの先生が、「良く来たね。この辺は景色が良いし、水がきれいでしょ。」と私の気分を落ち着かせるように言ってくれた。私の所も田舎ですとは言えなかった。

 私はベッドに寝かされて、徐々に時間を掛けて血を抜くのかなと思っていたら、看護婦さんがとても太い注射器を持って来た。こんなので俺の血を抜くのかと、ちょっと面くらった。私には血なんて皆同じ色にしか見えないが、先生は、「これはきれいな血だ。あなた酒もタバコもしないでしょう。」と言った。私が「はい、しません。」と答えると、「こんなきれいな血なら患者さんも喜ぶね。また何回か来てください。」と褒められたのをやけに覚えている。

 まもなく先生が空になった注射器を持って来て、「もう患者さんに注射してきましたからね。」と言った。さっきまで私の赤い血でいっぱいだった太い注射器は、いまはもう透き通っていた。上野村というと、3トントラックと血液と、この2つの話が印象的に思い出される。



 こんなに立派なトンネルが

 トンネルが開通してからのある日、お店の前に品川ナンバーの車が止まり、「上野村のキャッチ・アンド・リリース区間に来たんですけど、ベストを忘れてしまいフロータントも皆置いてきてしまって、帰る訳にも行かず困っていました。カーナビで調べたらお宅が専門店では1番近かったから来ました。どんなフライが良いですか。」と言って来て、フライを浮かせる薬とかリーダークリッパーとかを買ってくれた。

 そういえば、安中の釣り人でも、けっこう釣りの上手な人が上野村には通っているようだ。素人より、意外と上手い人に人気がある釣り場のようだ。これは行って見る価値があると思い、私も上野村へ行ってみた。そのときに、湯ノ沢トンネルを初めて通った。こんなに立派なトンネルがこんな山奥にあって良いのだろうか。5分くらいで通りぬけてしまった。

 上野村漁協の皆さんは、きさくで良い感じの人たちばかりです。お店から約45分くらいで行けます。これからどれだけ伸びるのか楽しみです。お店では、上野村の年券と日釣券を扱っています。皆さん宜しくお願いします。

アンクルサム(群馬県安中市松井田町/電話027-393-2196)

| 中山道の釣り旅  | 02:04 | - | trackbacks(0) |
中山道の釣り旅 第20回「図書館で本をもらう/あの大きくて厚い洋書」
市の図書館で、古い雑誌や本を市民に無料で1人5冊まで、頂ける日がある。市民には人気があって当日の会場はいつもひとだかりがすごい。だから他の人に取られない内に、自分が欲しいのか欲しくないのか分からないうちに、いただく本を決めなければならない。私の性格からすると、どうも苦手なジャンルである。無料が嬉しいくせに、恥ずかしい気持が結構な割合で心の底にあるのが分かる。
女の人はバーゲンで慣れているのか、隠し玉を何人も用意している。それは子供である。私なんか順番を待っている時もうつむきかげんで早く終わらないかなという心境なのに(自分で来たくせに)、女の人は子供を3人ぐらい連れて、それも赤ちゃんから幼稚園ぐらいの右も左も分からないような子供まで勘定にいれて、さらに旦那まで家族総動員でやってくる。真剣勝負をしながら女どうしで世間話を楽しむくらいの余裕がある。

せっかく早く行ったのに失敗する

私は今回は、早く行こうと決めていた。今までの経験上、開始から5分も遅れると、もう勝負あったという感じになってしまう。そこで30分ぐらい前に行くと、入り口に3人ほど待っている程度だった。知り合いの市役所の女の人が通りがかって、小板橋さんまだ早いからそこの部屋でお茶でも飲んで待っていたらと言われたので、ついふらふらと部屋に入ってお茶を飲みはじめてしまった。
昨日私は高崎のギャラリーへ写真展を見に行っていた。新聞社がいくつか来て写真を撮っていたので、ひょっとしたらその記事が載っているかもと、近くにあった上毛新聞を開いてみた。すると写真がいくつか載っていた。なんと何枚もある写真の中で、私のだけ1人で大きくドアップで写っているではないか。それもなんだかカメラを意識した嫌らしいポーズででかでかと載っている。とても恥ずかしくなったが、でもちょっと嬉しくてまんざらではない。なあんて、しばらく写真と記事にひたっている内に、外が騒がしくなっている。
出てみたら、さっきまで3人ぐらいしかいなかったのに、あれあれもう50人ぐらい並んでいるではないか。たちまちさっきの(やった―)というほのぼのとした気持ちが吹っ飛んだ。最初から並んでいれば3番目だったのになあ。今ははるかかなたに先頭が見える。50人の内7人か8人が男で、後は全部子連れのお母さん方だ。すると図書館に勤めている同級生のフーちゃんが出てきて言った。フーちゃんは私よりずいぶん若く見える。
「今回は本の部数が少ないので、申し訳ないのですが、お子さんを連れて来たお母さん方は今回に限りお子さんは遠慮して下さい」。
それまで余裕な感じで友人同士で談笑していた女性軍も、子どもという隠し玉をなくしたためか、急に戦闘態勢になった感じだ。

フライフィッシングって、まだ良く分からない

順番が来て最初に私の目に飛び込んで来たのが、開高健さんがモンゴルでイトウの120cmを軍手でむんずとつかんでいる、雑誌の表紙写真だった。イトウの腹の白と軍手の白、イトウの体の茶色、開高さんの着ている服の茶色が、申し合わせたように決まっている。また笑顔が良い。生まれたての赤ちゃんのようになんの邪念もない。大人が気が付かない内に大人自身が赤ちゃんに微笑んでいる感じのようだ。私を待っていたような開高さん特集との出会いだった。こんなにごった返している安中市立図書館の中で、この雑誌を手に取るのは、まさしく私しかいないだろうと思った。
私の印象では、開高さんは釣りをするとき一心不乱に集中している。まるで時間が止まったような時間を過ごしている。私は釣りで今までこんなに贅沢に時間を過ごしている人を知らない。普段せこせこした釣りをしている自分が悲しい。でも地元の碓氷川で18cmぐらいのヤマメをヒットした時は、それでも自分は充分満足する。どうしてなんだろう。フライフィッシングって、まだ良く分からない。

「あの大きくて厚い洋書」

去年、お店の近くに大型のチェーン書店が出来たのでよく寄るようになった。釣り関係の雑誌もちょこちょこと見てみるが、フライフィッシング関係の本や雑誌はほぼ見当たらないと言って良いぐらいだ。これでは盛り下がってしまうなと思う。ぱらぱらと見ていると、ある雑誌で「釣り本」の特集をやっていた。
私のお店で、ある洋書のフライフィッシングの大型本を何年か前に仕入れた。ビニールでカバーをしてお店のウインドウに何年もディスプレイしてあるが、お客様には大き過ぎて目に入らないのかもしれない。もしくは大き過ぎて関係ないやと思っているのかもしれない。
「フライの雑誌」の編集部に聞いたら、こちらが書名を言う前に「あの大きくて厚い洋書」で通じてしまった。好きな人がいるので古本の市場ではけっこうな値段がついているらしい。その点、なぜか私のお店にはダンボールに包まれた新品がまだ何冊かある。今どき新品があるお店は少ないのではないか。
バンブーロッドは通信販売できませんが洋書なら県外の方にでも送ることができます。田舎にはけっこうこういうお宝が眠っています。



■「FORGOTTEN FLIES」
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■「RareandUnusualFlyTyingMaterials
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アンクルサム(群馬県安中市松井田町/電話027-393-2196)
| 中山道の釣り旅  | 12:03 | - | trackbacks(0) |
中山道の釣り旅 第19回「白戸さんのバンブーロッドと阿久沢さんのフライは予想外の反響でビックリ」
あんなに色々話しを聞いてくれたんだから、何か買わなければ



「フライの雑誌」に広告を出しているので知っている人は知ってくれていると思いますが、私のお店には70本以上のバンブーロッドを常時展示しています。お店は交通の不便な場所にあるので、バンブーロッドに興味がある関東地区のフライマンでは車で来てくれます。会社の出張ついでの人も寄ってくれます。ありがたいことに、今日はお店やっていますか?と確認の電話を入れてくれる方もいらっしゃいます。遠い所から来てくれる方も多いので、お店が閉まっていたら泣くに泣けないですよね。
今日は、多摩ナンバーのお客さんが午後2時過ぎに、やはりバンブーロッドを見に来てくれた。自分はこう言うぐあいにバンブーロッドを使いたいんですけどどうでしょうか、と結構長い間自分の思っていることを話してくれます。そうですよね。まだ、バンブーロッドを使ったことがなければ、聞きたいことや不安に思っていることが沢山ありまよね。それでもある程度納得がいけば、また考え方も違ってくると思います。自分が思っていたことを聞き終わると、急にほっとするのか、ロッドの展示スペースを離れてマテリアルなどを見始めてくれる。
あんなに色々話しを聞いてくれたんだから、何か買わなければ悪いと思って、秘かにマテリアルを見ているのが私には分かります。でも気にしないで下さい。お客さんの知りたいことを分かっていただければ、私はそれだけでOKです。本当に気にしないで下さい。

じつは私も3回も通り過ぎてしまったんですよ

あのう、駐車場はどこにあるのですか。申し訳ないのですが駐車場はお店にないので、これこれの所に車を置いて来てくださると、助かります。近くに駐車場はありますか。脇道に入り、石垣の高い方ではなく低い方に車を止めてください。そこは大丈夫なんですか、とお客さんが聞くので、そこはお寺さんの私道なのですが、私は檀家なので大丈夫です、お寺さんに言ってありますから。ずい分真面目な人なんだな。多摩ナンバーなのに自分の考えが決まれば、また来てくれるつもりの様だ。
私のお店は小さいから、すぐに分からなかったでしょう。いや、カーナビにお宅の電話番号を打ちこんだら出ましたよ。それに、と言って看板を指差してくれた。このお客さんは落着いているな。普通2回か3回往復してしまうお客さんが多いんですよ、だからお店が分からないなんて電話があると、私がお店から上半身を出して、ここです、ここですと手招きするんです。するとお客さんが何だか急に、にやにやしだして、じつは私も3回も通り過ぎてしまったんですよ、と言った。申し訳なかったですね。
お客さんによっては今時駐車場ぐらい作っておけよと思っている人もいると思いますが、本当はその通りで、大変申し訳ないと思っています。今度初めてカラーで「フライの雑誌」に宣伝を出したものですから、今までいつか行って見ようと思っていた方も、背中を押されたような気がしてと来てくれたり、電話を入れたりしてくれている様子です。そんな感じでやっているフライショップです。

自分が選んだバンブーロッドで早く釣りに行きたい



また第79号の広告では白戸ロッドさんがリーズナブルな価格で出ているものですから、カラーのお陰なのか、お客さんもこれまではヘェーぐらいに思っていたのがこれは行ってみる、あるいは電話をかけてみる価値があると思ったのかどうか、とくに県外のお客様からの問い合わせをたくさんいただきました。
私は、遠くのお客様からの電話の問い合わせには、ぜひじかにお店に来て、白戸ロッドをはじめ70本からあるバンブーロッド(トンキンケーンや真竹や女竹)をご自分の目で見てみませんか、といいます。丸や四角や5角や6角や、非売品のバンブーロッドやハンドメイドのリールも手に取って見てください。デモ用のバンブーロッドは自分のリールを持ってくださればキャステイングをしてもらうこともできます。自分が良いなと思ったものを見て触って振るだけでも、写真を見ているだけよりは全然違うと思いますよ、とお伝えします。
今までこういう様に、お客さんの目を見て、お客さんの不安がなくなるまでとことんまで話をしてきました。自分が選んだバンブーロッドで早く釣りに行きたいと言う気持ちが顔に出ているのが私にもひしひしと感じられて、納得してもらえます。そんなやりとりの中でバンブーロッドを買ってもらっているので、今まで1本だけと言う人はほとんどいらっしゃらなくて、多い人は10本以上買ってもらっています。
それなので、大変申し訳ないのですが、お客さんに電話で好みを聞いて、本人でもない私が分かったような感覚で、調度良さそうなのがありますから、なんてバンブーロッドを送る気持にはなれません。今まで1回も電話での話しだけで売ったお客さんはありません。広告まで出しているくせにそりゃないだろうと、遠方のお客様のお叱りの声が聞えてくるようですが、この考え方でやって行こうと思います。お客さんが納得して買ってもらうのが1番だと思う私には、そういうやり方しかできません。今の世の中はインターネット時代ですが、こういうお店が1軒ぐらいあってもどうでしょう。

あとは時代の流れにどれだけ私の意志を貫けるか



そんなころ、「フライの雑誌」の編集部から電話があった。私は少し興奮気味に、じつは今回の広告は今までになく反響があり驚いているんですよ、県外からの問い合わせが多くて、驚いているんです。でも私は、やはりよくお客さんの話しを聞いて、バンブーロッドを見て触って感じてもらって、本人がこれだと決めてもらうのが1番だと思っている人間なんです。だから県外から来た通信販売のお申し込みには、申し訳ないんですがお断りをしているんですよ。編集部の人がどれだけ頑張ってくれているか良く分かっているだけに、申し訳ないと言う気持で一杯なんですよ、と言った。
「そんなに反響があったんですか。」。「そうなんですよ。」「残念ですよね。もったいないですね。」。編集部の人はこんな程度の言葉をかけてくれたが、本心はどんなだったろう。それでも、「今どきこんな商売をしているフライショップは日本広しと言えどもほとんど聞いたことがありません。」と、そこは編集部だけにやんわりと私に言った。
釣り関係の知人にこのことを話すと、知人は「私もインターネットで買物をしますが、バンブーロッドとなれば話しは違います。見に行きますよ、触らせてももらいますよ。できればキャステイングもさせてもらいますよ。でもね、あなたの商売としては、通信販売をしないのはどうか、と思います。」と言ってくれた。
本当に的を得ている、ありがたいアドバイスだ。この知人はいつも大事なことをさりげなく話してくれる。あとは私がこの時代の流れに、どれだけ私の意志を貫けるかだな。田舎でやっているからできる話しだとは思うけど。
そんなわけで、県外もしくはお店に来ることができない遠くのお客様には、ご迷惑をかけて大変申し訳ないと思っています。お店へ遊びに来てくれれば、楽しんでもらえると思いますのでよろしくお願いします。

アンクルサム(群馬県安中市松井田町/電話027-393-2196)
| 中山道の釣り旅  | 14:31 | - | trackbacks(1) |
中山道の釣り旅 第18回「カモの7羽の子供」(2)
堰堤からタヌキが転がり落ちた


 次の日、いつもの溜まりから確認したがカモたちはいない。あれー、と思った瞬間に池の真ん中辺りが急に波だった。泥とおんなじ色の物体が、私になれなれしく近づいてくる。よく見るとグレーの尾ひれだ。気がつくと私の近くに3匹はいる。なんと70cm級の真鯉だった。
 中瀬橋の上で上流を見ていたら、堰堤の上をものすごい勢いで駆けて行く動物が目に入った。尾っぽの太さでタヌキだとすぐに分かった。えらいスピードで駆けて行ったもんだから、突き当たりのコンクリートの堰堤から転がり落ちたが、さすが天然のタヌキで、運良く生えていたつる草に助けられて途中で引っかかった。たまたまそこにしか生えていなかったのに。
 もしかしてそのまま川に落ちたらタヌキはどんな行動をとるのかと、可哀相なことを期待してしまった。早起きをしてもカモの親鳥と子供たちには会えないが、碓氷川の懐深い自然とそこに生きる動物たちに、(まだ朝だけど)乾杯だ。

その日は突然やってきた

 気分転換にいつものコースと違う道を4日前から歩いている。田んぼには水をはられている。濃い緑のイネの苗が、田植えからいく日かがたって、田んぼになじみ始めている。
 農家の生まれではない私は、田んぼの広さをどう表現していいか分からない。道路の左側がいちめん田んぼになっている。その奥の方には20年以上はたっている家々が見える。昔は松井田駅の突っ込み線と言って、汽車の入替えがあったところで、ほとんど家はなかった。さらにその奥には中仙道沿いのもっと古い家々が見える。
 その上に適度に低い山がずーっと連なっている。丘の中腹にはバイパスが通っていて、大型車が通ると、そこがバイパスだと遠くからでもよく分かる。平らな田んぼの奥にこんもりした山々の高さが、何ともよい感じだと思う。昔、松井田城があったのはこの辺りだ。ここから見る景色もいいな。田んぼのイネの青さが景色をいっそう引きたてている。鑑賞にふけっていると、どんよりした空にいきなり黒い物体が現れた。
 あー、鵜か。鵜が田んぼに舞い降りていく。…なんてあまり聞かないよなと思う間もなく、それがあのカモだと気づいた。どう見ても、大人のカモだ。
 カモは浅い水の上を滑るように泳いでいく。私からだんだん遠くなる。イネの苗で見えたり見えなかったりするが、ときどきあのアラビア数字の2の形の顔をイネの間に見せてくれる。
 次の田んぼに移るときに土手に出て、私に全身を見せてくれた。なんと大きいことか。さらに次の田んぼに飛びこんだ。しばらくすると、あれ、1羽じゃない。ポコポコ頭が見えては消え、また現れる。いったい何羽いるのか、6羽か7羽で最後が微妙に勘定できない。

親より子の方が数倍神経質なんです

 最後にカモの親鳥と子供7羽と別れてから、数えたら25日目の出来事だった。私は恥ずかしいが、カモの子供たちが見たくて碓氷川の同じ溜まりへ、25日間ずっと通っていたという愚か者です。
 最後に見たときはいかにもまだ子供という感じがした。しかし目の前にいる子カモは、もう大人の大きさだ。私が見ていることも忘れて、7羽が仲良く並んで、私にお尻を振り振り遠のいて行く。
 不思議なもので、あの時の子供かと思うと体格は大人だが、どことなくおどおどしている気配を感じる。親鳥の落着きはらった風格になるにはまだまだだ。親鳥より子供の方が数倍神経質なんですと、島田さんが話してくれたのを思い出した。
 ちょうど今は島田さんがコイに餌を与えている時間帯だ。私にカモの子供たちを教えてくれたのは島田さんだが、島田さんもここのところずっとカモたちを見つけられていなかった。やっとカモの子供を見つけましたよと報告したかった。なにせ25日間あきらめなかったことのご褒美だ。

その田んぼは、じつは…

 足取りも軽く橋まで行くと、島田さんらしき後姿が遠くに見えた。あまり近くで声を掛けるとビックリするだろうから、少し離れたところから「おはようございます。」と声をかけた。
 無駄口を言わず単刀直入に、「島田さん、いたんですよ。」島田さんもそれだけですぐに分かってくれた。
 実はこれこれしかじかでと話すと、島田さんは一歩引いたような表情になって、「カモが田んぼに入るとお尻を振り振り草を食べるから、そのお尻が苗を折ってしまってあまり良いことではないんですよ。」と言った。なんだか島田さんの話ぶりが急に農家の人っぽく、専門的に聞えた。島田さんの顔付きがいつもと違い、弱ったようだ。
 つづけて島田さんが少し辛いような声で、「小板橋さんがカモを見た田んぼは、じつは私の家の田んぼなんです。」と話してくれた。なんて不思議だろうと私は思った。島田さんの手のひらから直接餌をもらった親カモの、その子供たちが大きくなり、飛べるようになったら一番最初に島田さんの田んぼに飛来した。ドラマチックな話だと思います。
 島田さんは「苗を折られたとしてもカモたちが悪いわけではないので…」と、落ち着いていた。さすが年の功だ。

アンクルサム(群馬県安中市松井田町/電話027-393-2196)
| 中山道の釣り旅  | 12:04 | - | trackbacks(0) |
中山道の釣り旅 第17回「カモの7羽の子供」(1)
最初の子供は11羽いた


 帽子をかぶり肩から年代物のバックを吊るし黒い長靴をはいて出かけるのが島田さんのいつものスタイルだ。最近会うと長く話すようになった。
 大分前、河原にワンちゃんを連れてきている人がいて、水たまりの畔でカンを叩いているような音が聞える。何をしているのかなといつも気になっていたことはなっていた、のだがそれが島田さんで、カモに餌を与えていたことが分かった。自然の鳥にそう言う事をしてほんとは良いのか分からないが、カンの音が聞こえる範囲にいるカモは寄って来て島田さんの手から直接餌を貰って食べると島田さんは話してくれた。
 大人のカモが4羽いるそうだ。島田さんが入院している間にだれかエアガンで撃ったやつがいて、羽が傷ついたと言っていた。それからここに近づかなくなったらしい。最初の子供は11羽いたが今は7羽だそうだ。

ぼーっと見ている私

 テレビで、都会ではカモの子供が人間が作った小さい池に飛び込んで、親の後に続いている光景を流していた。都会も大変だけど自然の中のほうが危険はいっぱいだと思う。トビはいつも空高く気流を探し、ゆっくり歌の文句じゃないけれどくるりと輪を描いている。実際もまさしくそのとおりで、ずーと首が痛くなるまで見ている私です。
 トビが碓氷川でハヤなどを捕まえて飛び去るのを何回か見ている。空からいきなり魚をつかむシーンも見たことがある。「野生の王国」というテレビ番組があったが、自分の前で繰り広げられている出来事はテレビの枠をはるかに越えている。
 山がきれいだ川がきれいだと、人間の感覚とは違う領域で毎日食うか食われるかのせめぎ合いが行われている。平日の昼間、必死で仕事をしている人もいるだろう。私は今の自分を忘れ、ただ目の前の出来事をぼーっと見ている。

糸が悪さをする

 島田さんにカモの子供のはなしを聞いた翌日、いつものコースを変更して橋の下にそっと顔を出した。橋の上流に親鳥と子供が群れて水の上に浮いている。6羽までは何とか勘定できるがすぐ動いてしまう。7羽いることが分かった。
 カモの子供を一度に7羽も見るのは初めてだ。親鳥は7羽の子どもたちからすこし距離をおき、1羽づつ目を配っている。大変だと思うが私が見てもなにか余裕があるのが分かる。まるで鵜匠だ。
 人間が鵜飼いをやる場合は糸がついている。それはそれで物凄いテクニックだろうが、自然で糸がないということは自由だということだ。フライフィシングは糸がついている、そのため皆んな苦労する訳だ。糸が悪さをして不自然になってしまうので、魚に気づかれる。

ひげなんか生やしやがって

 私はカメラを構え、たまりに泳ぐ子供たちのシャッターチャンスを狙うが、糸がついていないから言う事をきかない。親鳥が下流に泳ぎ出したら子供たちがいっせいに親鳥の後ろへついて泳ぎ出した。よくテレビで見る光景だ。
 子供たちは固まりになって親鳥より先に泳いでいった。あれあれと思っていたら1羽だけ大分遅れていた。親鳥はしっかり数を勘定しているんだな。その1羽が追いつくとまた親鳥が先頭になって泳いでいった。
 下流に泳いで行く時、私に対して目で、お前どこの馬の骨だ、ひげなんか生やしやがって、と言っているようだった。私が必死で写真を撮ろうとしていたのがこわかったのかな。親鳥の目がおびえたように用心深く、こちらに集中していたように見えた。
 それからしばらくカメラを担いで川に通ったが、なかなかカモの親子には会えなかった。10日以上通った後、川から大分離れたところで会った。親が1羽黄色い旗をくわえて、子供が2羽で横断歩道を渡っている。なかなか会えないのになんでこんな所で会えたのかなと良く見ると、交通安全マナーの旗だった。旗の中の絵の白鳥が私にはカモに見えた。
 カモに幾日も会えなかったので、白鳥がカモの親鳥と子供に見えたのだろう。カモたちはどこヘ行ってしまったのだろう。

アンクルサム(群馬県安中市松井田町/電話027-393-2196)
| 中山道の釣り旅  | 18:26 | - | trackbacks(0) |
中山道の釣り旅 第16回 「電車で来たバンブーロッド」
こんどの日曜日、バンブーロッドを持って行きます


 白戸さんから電話があった。バンブーロッドが数本完成したので、こんどの日曜日、そちらにバンブーロッドを直接持って行きたいとの電話だった。
 そういえば、ずっと白戸さんに会っていないな。最近はロッドも宅配便で来ていた。でも白戸さんが最初にバンブーロッドを見せに来た時は、私はてっきり車で来ると思っていたら、わざわざ神奈川県から大型のスクーターで来てくれた。スクーターの後ろに、ケースに入れたバンブーロッドが何本かくくりつけてあったのを、季節は忘れたが印象的に覚えている。
 「本庄あたりに入ると急に風が冷たくなりますね」。やはり乗用車では分からない自然の感覚がスクーターに乗るとひしひしと体に染み込むのだろうな。私の二番目の姉も神奈川県にいる。朝に神奈川を出ても、松井田に着く時はたいがい午前11時か午後2時ごろになる。家庭があるから大変なんだろうな。姉はもちろん電車で来るのである。そんなところから白戸さんが電車で来てくれると言うのである。
 私は「電車でわざわざバンブーロッドを持ってこなくも宅配便で送れば結構ですよ」と言ったが、「小板橋さんのお店にある他の方のバンブーも久し振りに見たいもので」と白戸さんは言う。私は「ほんとに良いんですか。こちらは朝晩冷えこむ季節になりましたよ」と言った。
 白戸さんが風邪気味だと話していたこともあり、私は心配だった。「何時ごろ来ますか。」。「午前10時ごろ行きたいと思います。」。「では高崎駅に着いたら電話をください。松井田駅まで車で迎えに行きますから。」と、電話を切った。
 午前10時ということは朝何時に起きるのだろうかと、余分な心配までしてしまった。新幹線で来れば早いよとあとで知人が言っていたが、私はそのとき新幹線と言う手があることをまったく気がつかなかったのです。

さっそくバンブーロッドを見せてもらった


 次の日曜日、午前9時過ぎに「今高崎駅に着きました。」と電話があった。ずいぶん早いな。これは新幹線で来たのかな。とりあえず松井田駅までレッツゴー。
 白戸さんと会うのは久しぶりだ。顔が分かるかな、なんて思いながら駅に行く。白戸さんがビニールに包まれたバンブーロッドを少し上げて、にこにこしながら一番最後に階段を降りてきた。
 どうもどうも久しぶりです。今日はお店の前の旧中山道が身体障害者の皆さんのマラソン大会で通行止めなので、少し歩いてもらいます。悪いですね。(身体障害者の選手と健常者が助け合い何キロか歩く速度でマラソンをします。もう15回にもなるそうです。NHKのウオーキングの番組で講師をしていた増田明美さんが毎回参加しています。県外からも大勢参加しています。お祭りやパレードほど応援をしている人は少ないが、参加している選手は元気いっぱいで、何だかこっちまで元気をもらったような感じがします。)
 お店に着いて、一服することなしに、さっそくバンブーロッドを見せてもらった。いつも感心するのですが、白戸さんは何ヶ所か、いつも新しいことをして来てくれる。今回のスライドシートも面白いし、フェルールキャップも今回が初めてだ。普段そういう物はついていないため、ついしまう時に「小板橋さんキャップ、キャップ」と言われてしまう。キャップも手が込んでいてセンスが良い。竿袋はおふくろさんが作ってくれるらしい。
 私が「竿袋の入り口は2ヶ所に分かれていないのですか」と聞くと、おふくろさんが「面倒くさがって、やってくれないんですよ。」ということだった。そうしてある方がいいことは白戸さんも充分分かっているが、自分でやろうとするとおふくろさんがミシンを壊されると思うらしく、駄目らしい。私もそれ以上のことは言えなかった。
 白戸さんのえらいところは、前回指摘した箇所をきちんと意識して作ってあることだ。指摘してなんて偉そうなことを言ってすいません。
 安いバンブーロッドだから、なんて思われたくないことと、お客様にがっかりさせたくないため、白戸さんが毎回色々工夫して腕を上げているからで、じつは本人が一番びっくりしているようです。でもほんとにパーツなども良くなっているし、ロッド製作の本数をこなすせいか、毎回良い感じになってくる。私は本人を前にあまり褒めることはしないし、まだまだとはっぱをかけているところです。完成するたびに良い感じですが、これからですから見守ってやってください。
 検品が済んでちょうどお昼の時間になった。せっかく神奈川県から電車でバンブーを持って来てくれたので、今日は私がお昼を奮発しようと思った。白戸さんが好きかどうかわからないが、松井田にはなかったような洒落たおとうふ専門店が最近できたので、電話を入れると、今日は予約の他は全部お断りしているんですと言われてしまった。

トンキンケーンはオーブンを使うが
真竹や女竹は国産だから火鉢で。


 あれー、弱ったな。残念。松井田にもこんなお店があったんですか、と驚かそうと思ったのに。
 しようがないので、他の美味しい店はどこかと考えた。サミーのハンバーグか、上の家のカツ丼か、すかやのそばか。白戸さんに聞くとそばがいいと言うことで、すかやのそばに決まり車で出かけた。エビ天付きの盛りそばを白戸さんは注文した。私は盛りそばにミニセットのトンカツ丼をいただいた。
 店のなかを見る限りそんなに混んでいないのに、前に来ていた4人連れのお客さんが注文をするので「すいませんすいません」を何回繰り返してもお店の人が出てこない。私はそれを見ていて、地元のお店なので何だかこっちまでがお客さんに申しわけがないような気分になって来た。
 ようやく奥からお店の嫁さんらしき人が、慌てるでもなく淡々と応対をしていたのが、やはり田舎なのかなと思う。そんなことを横目で見ながら、白戸さんに「今朝何時に家を出て来たのですか」と聞くと、「朝5時半に出てきました。」と言う。
 新幹線で来たのかなと思っていたら鈍行だった。なんとそんな時間に大変だったでしょう。白戸さんは「朝早いのは平気です。学生のころ山岳をやっていたので、4時間5時間歩くのも苦になりません。」と言った。
 信越線で松井田に来る途中、電車が2両でした、良いですね。でも椅子が合い向かいで、向かいに座っていた小さい子が白戸さんのバンブーロッドをどのくらいの強さかわからないが、とにかく蹴ったらしい。それが分かっていたのに親は注意しなかったと話していた。やめるように言ったのですかと聞くと、おっかないおじさんだと思われるのがいやで黙っていた、と白戸さんは話した。
 白戸さんは優しい人なんだな。ロッドはしっかり梱包してあるから異常は無かったが、弱った親だな。
 もうひとつ、白戸さんは凄いなと思ったこと。「トンキンケーンは外国から来た竹だからオーブンを使いますが、真竹や女竹は国産だから火鉢で火入れをしています。真竹や女竹にオーブンは使っていませんよ。」と言っていた。
 それは私には初耳だ。とても良いことだと思います。これはますます白戸ロッドが楽しみだ。

二人で妙義山に行った。
こういう奇岩の山は珍しいでしょう。


 白戸さんとは年齢が近いせいか趣味も合うようだ。白戸さんは神社仏閣、美術舘めぐりが好きなんだそうだ。弱ったな。そう聞いてしまったので、私はいけない癖が出てきてしまい、すかやの近くにあるお宮さんへ、そのまま白戸さんを案内してしまった。
 けっこう良いですね、なんて言うもんだから、もう止まらない。近くの不動寺にも案内してしまうと、白戸さんが心配して「お店は大丈夫ですか。」。私は「んー、シーズンオフだから。」なんて答えました。
 「白戸さんは何時の電車で帰るんですか。午後3時5分ですか、じゃあちょっとまだ紅葉には早いけど妙義山に行っちゃいましょう」ということになり、妙義山にも行った。「こういう奇岩の山は珍しいでしょう。」。「凄いですね、中国の山水画の世界ですね。」…。
 山岳部にいたせいか、白戸さんはやはり山が性に合うようで、気持が良さそうだ。眺めの良いところで車から下界を見ると、いつも見なれている私も天気が良かったこともあって気持が良かった。カメラを持ってくれば良かった、と白戸さんが何度も言っていた。白戸さんは一眼レフカメラを2台と他に2台持っている。でもデジカメはまだ持っていないんです、と言っていた。
 二人で妙義神社と中之岳神社に行き、あの形容しがたいゴールドのとてつもない大きさのエビス様をラストに、電車の発車時刻ぎりぎりで松井田駅にスベリこんだ。
 今回はなにか白戸さんのバンブーロツドの宣伝ぽくなってしまい、申しわけない。それにちょっとお店を留守にして申しわけない。



アンクルサム(群馬県安中市松井田町/電話027-393-2196)
| 中山道の釣り旅  | 12:39 | - | trackbacks(0) |
中山道の釣り旅 第15回 「 HiRyu(飛竜)デビュー」
 妥協しない人

 今年のシーズン前、地元の阿久沢さんがやってきて、「自分で巻いたフライを小板橋さんのお店で売ってもらうことはできますか」と言った。エー、阿久沢さんのフライをですか、と私は驚いた。
 地元で長い知り合いの阿久沢さんが釣りが好きだということを、最初私は知らなかった。とくに地元の川にこだわって、釣りをしている。お店でマテリアルを買う時なども、真剣でほんとに自分で納得しないと買わないし、絶対妥協もしない。
 リールを買ってもらった時のこと。阿久沢さんが欲しかったリールはもう生産中止でお店に2台しかなく、1台を見てもらった。実際には1台が正規で、もう1台はラインが巻いてあり、1度も使用したことはなくて、ディスプレー用にと思っていたやっだった。
 阿久沢さんは、2台のリールを一生懸命に見てくれた。そして「小板橋さん、悪いんですけど、このラインが巻いてあるリールの方をゆずって下さい。」という。たしかに使ってはないけど良いんですか。お願いします。
 私としては少し値引きをして下さいと言われるかなと思っていたら、何も言わず正規の金額を払ってくれた。
 私は一生懸命リールからラインをはずし袋に入れて渡した。
 ほんとに妥協しない人だ。私にはまねできないな。

 40日で357匹

 そんな阿久沢さんが、自分のフライをお店で売らしてくださいと言うのだから、自信があるのだろうな。そう言えば、いつもシーズンが終ると今年は何匹釣りました。と話してくれる。サラリーマンだからシーズン中に釣りができたとしても、土曜日と日曜日と祭日だけで、日数は限られている。その中で、40日で357匹とか、きちんと何匹と言ったんだけど私が忘れた。でも合計するといつも700匹以上と言っていた。
 私なんか二桁なんて釣ることが少ないぐらいなのに、同じ地元の川で大したものだ。私なんか二桁に近くなると、あれ何匹釣ったかななんて分からなくなり、暑かったりしたら余計にそうで、もう一度きちんと勘定しなおすような騒ぎです。そんなに釣って勘定は大丈夫なんですか、と聞いてみたら、1匹釣るとそのフライはもうフライボックスに戻して、また新しく付けかえるそうだ。家に帰ったらそのフライを勘定して手帳に記入するそうだ。それなら間違いない勘定のし方だ。
 その阿久沢さんが考えて、何年も使ってきたフライを、私のお店で置いて、売れたら売ってくれませんか、と言う。私はお店で今まで、自分の巻いたフライしか置いて売っていないから、こんなことを言われたのは初めて。私も基本的には悪くない話だが、1回お互いに良く考えましょう、下世話な話ですが、阿久沢さんも売って損しないように良く考えてください、と話した。(私も恥ずかしいが結構いいアルバイトなんですよね。)。
 そして付け加えた。「ただし阿久沢さんのフライがどれだけ売れるかは未知数ですよ。とりあえずフライを一度見せてください。」

 情熱と信念で巻き上げられたフライ

 幾日かして阿久沢さんがフライボックスを1箱持って来た。
 片側にCDCのグレーのドライが40本、もう片側にCDCのホワイトのドライが40本、きれいにセットされている。これは伊達にたくさん魚を釣る人のフライの巻き方ではないと直感した。これだけの数をこんなに均等に巻くことは難しい。やはり阿久沢さんはただものではない。フライフィシングが本当に好きなんだな。
 それではお店で売らしてもらいますよと言うことで決まった。でも、お店に置いて、阿久沢さんのフライを真似る人が出ても知りませんよと念を押すと、「かまいません」と言ってくれた。
 そうと決まれば、何とか阿久沢さんのフライが1本でも多く売れるようにお店としても一生懸命応援させてもらいます。阿久沢さんのフライパターンは何種類もあるわけではないし、こだわって1種類のフライなので、フライに名前を付けませんかとお願いしたら、気持ち良く「考えてみます」と言ってくれた。
 幾日かして、「小板橋さん名前を付けました。 HiRyu(飛竜)です」
 阿久沢さんの説明だと、竜が空に向かって立ち登る様子をフライにだぶらせた。という。飛竜はフックが立つようにして流れ、CDCが笠を開いたように見える。フックはTMCの#17で魚は尺を超えてもOKと言っていた。飛竜はなかなか壊れないそうだ。1本税込420円で売ることになった。
 飛竜は地元の渓流でこれだけの実績を積み上げ、阿久沢さんのフライに対する情熱と信念で巻き上げられたフライだ。阿久沢さんの人間性も込められている。飛竜を使うか、だれが巻いたかわからないマテリアルの質も分からないフライを選ぶか、それはフライマンの自由である。けして他のフライを貶している訳ではない。ようは魚が釣れればよい。
 今度は私も、何とか阿久沢さんの飛竜の良さをアピールしなければならない。断られるかと思いつつ、「できたら渓流で阿久沢さんの釣り姿を撮らせてくれませんか。飛竜を地に付いた形でデビューさせて上げたいので」とドキドキしながら頼んでみた。

 台風直撃の川で

 上州漁脇は9月20日で禁漁になってしまう。1番最後の祝日の、敬老の日の9月17日、午後1時にお店に寄ってもらう約束ができた。しかし9月6日、群馬県は10年に一度という台風9号に直撃され、碓氷川も物凄いことになっていた。あんまり感心しませんが私もつい川を見に行ってしまいました。川の流れの物凄さに橋の上でお尻がむずがゆくなりました。
 その日東京から知人が「台風はどうですかお店は大丈夫ですか」と電話をくれた。大変ありがたかった。「橋まで見に行きました」と話したら「それは危険ですよ」と良い意味で忠告してくれた。「ホワイト君はどうしましたか」。碓氷川の案山子のことまで心配してくれるか。現場は物凄いことになっていて私はホワイトのホの字も頭になかった。
 松井田にはたくさん渓流はあるが、とても釣りをする条件ではない。ただ水の色だけは物すごく澄んでいてきれいなのが唯一の救いだった。その日はメチャクチャ暑い日で、それも午後1時の約束なので、阿久沢さんには悪いことをしましたが、私はシューズにジーパンで出かけることになつた。

 元体操部と写真の額

 川に着いて、阿久沢さんが色々自分の装備について説明をしてくれた。「肩こり症なので身に着ける物は最低限度に押さえている」と話してくれた。車の中にはロッドとリールそれにフライがもうセットされていた。
 川は普段と違い、葦などがなぎたおされてキャスティングしやすくなっていた。阿久沢さんは身軽にササッと川に下りていった。実は阿久沢さんは中学生時代に体操部だったので動きがきびきびしている。今でも身のこなしがその当時をほうふつとさせる。
 台風で魚がどこにいるのかわからない。
 私は土手の上から一生懸命撮るが、近くには寄れなかった。しばらくして竿が曲がった気配を感じたので、あわててそ―と近づいてて見たら「ハヨです」。もうその時はリリースするところだった。普段からたくさん魚を釣っている人は、身のこなしや振る舞いがいちいち決まっている。
 イブニングにも川を変えてやってみたがハヨしかやはり釣れなかったと、夜になってお店に寄ってくれた。私が撮った阿久沢さんの写真を見てもらった。「自分の釣り姿を撮ってもらったのは初めてだ」と言っていた。
 現像してあげよう、私はそう思った。すぐ写真店に行き、2枚を2Lサイズに焼いてもらい、その足で100円ショップに行き額を探した。水色の縁で良い感じの額があったのでそれに決めて、お店にディスプレーして見ました。ちょっときどりすぎちゃたかな?





アンクルサム(群馬県安中市松井田町/電話027-393-2196)
| 中山道の釣り旅  | 12:07 | - | trackbacks(0) |
フライの盛り付け
 バス用のフライがボックスから溢れるので整理してみた。ガサッとひっくり返すと何年も使っていないフライが沢山出てくる。もう使わないだろうというフライをピックアップして、使うフライをボックスに仕舞う前に洒落っ気を出して皿に盛り付けてみた。
 ん〜、何だかごちゃごちゃしてる。スプーンとフォークの取り合わせもおかしい。どう見ても美味しそうに見えない写真になりました。



ウィンドノット(三重県)
| バスの雑誌 | 11:27 | - | trackbacks(0) |
8月27日 ヒガンバナとスモール
●自宅裏の坂道を下りきったところにA川がある。この辺りのA川の左岸にはサクラの土手があって、秋になると、そのサクラの根元ではヒガンバナが咲く。ヒガンバナは数千株も自生しているから、開花シーズンは河原が艶やかだ。川は橋を挟んで上流側が瀬、下流側はとろっとした大きな渕を作る。渕は昭和40年くらいまでは天然のスケート場になったというが、近年は一度も凍結していない。
●ヤマメ釣りでもと思ったが、こう暑くては骨折り損だろう。ならば、雑魚でもと夕暮れにヒガンバナ群生地の下手で竿を振った。夕焼け空の下で波紋が広がっている。着水と同時に毛鉤に魚が出て、あわせをくれたら寄ってきたのはカワムツだ。雑魚はいい。故郷に帰ったような、不思議と気持ちが和む。
●茜の空色に合わせて、次は16番のオレンジアンドパートリッジだ。時間が流れる。まったりと渕の流れ込みに流していたら、「グン」とあたりがきた。あわてて糸をたぐるが、カワムツやヤマベなんかじゃない、数十倍の引きだ。どんどんたぐり寄せる。スモールだ。雑魚狙いでバスがきたから驚いた。ヒガンバナが咲いて、気温が下がって、河原から川遊びが消えたら、本格的に狙ってやろうと思っている。



報告:毛鉤丸(飯能市在住)
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