2009.06.17 Wednesday
お客さんからはじめて特注された安中ネット(3)
目をつぶって下さい。私が手渡します。
それからさらに時間がたって、安中ネットさんから待望の連絡があった。
「小板橋さん、注文のランディングネットができ上がりました」
グリップが傷つかないように大切に持ってきてくれた。思ったより小ぶりに見えた。しかし寸法どおりだとのこと。このカリンの紅白の模様と色の出具合はどうだろう。すばらしいと私は思うけれど、それは私ではなく注文者が感じることだ。安中ネットさんは言った。
「これでいらないと言ったら、おれもう絶対許せない」
「だめだったらお店に飾っておけば他の人に売れると思うよ」
すると、安中ネットさんは
「そんなことはしない。自分で使います」
と言い切った。そうとう真剣に作ったことが気迫となって伝わってきた。これを使う人は幸福な人だ。
「10日ぐらいしたら寄ってみるよ」
と言って、安中ネットさんは帰っていった。売れたら電話を下さいと言わないところに彼の覚悟を感じる。私はさっそくTさんの携帯電話にかけた。待ちこがれていたTさんは、出来た感じはどうですか、と、やつぎばやに色々な箇所の仕上がりを私にたずねてくる。
「それより自分で来て確認してくださいよ。私はTさんじゃないんですから。今晩お店はやっていますからお待ちしていますよ」
「じゃあ絶対行きますから」
その日の夜9時過ぎ、いつもの2人で来てくれた。品物をこんなふうにお渡しするお店はないと思います。たいへん申し訳ない。
「安中ネットさんがだいぶ一生懸命作ってくれたんで、悪いんですけど目をつぶって下さい。私が手渡しますから」
どうぞ、と言うとTさんも面白い人で、ネットを受け取ったまま、
「俺まだ目をつぶっているからさ。第一印象どうだい」
と、背の高いほうの人に聞いている。
「ものすごくいいよ」
「ほんとかい。紅白の色は、模様はどうだい」
「ものすごくいいよ」
「ほんとかい。今度は裏返してみてよ。どうだい」
「こっちの面もいいよ」
「ほんとかよ。ネットの櫻色はどうだい」
「悪くないと思うよ」
「ほんとかい。じゃあ、目を開けるよ。・・・うわあ、ほんとに良くできている」
おどろきの声の連続だ。私もこんなに喜んでくれるとは思わなかった。1つや2つ何か言われるかなと思っていた。安中ネットさんがもう注文で作るのはこりごりだと言ったが、それくらいがんばった気持ちがTさんに通じたようだ。私はTさんに聞いてみた。
「安中ネットさんに何かメッセ―ジはありますか」
するとTさん、
「今晩はこのランディングネットを抱いて寝ますとお伝えください」

グリップ材 = カリンバール紅白・スポルト
フレーム材 = バーズアイメープル・ウオールナット・ブラックチェリー
イタヤカリン
手編みネット = 桜色
Tさん特注品 19,800円+税
アンクルサム(群馬県安中市松井田町/電話027-393-2196)
※「マルタの雑誌」は季刊『フライの雑誌』の読者を対象としたweb投稿企画です。『フライの雑誌』読者なら楽しんでもらえそうと感じたら、フライから話題が離れてしまってもかまいません。ご投稿はinfo@furainozasshi.comまで。
それからさらに時間がたって、安中ネットさんから待望の連絡があった。
「小板橋さん、注文のランディングネットができ上がりました」
グリップが傷つかないように大切に持ってきてくれた。思ったより小ぶりに見えた。しかし寸法どおりだとのこと。このカリンの紅白の模様と色の出具合はどうだろう。すばらしいと私は思うけれど、それは私ではなく注文者が感じることだ。安中ネットさんは言った。
「これでいらないと言ったら、おれもう絶対許せない」
「だめだったらお店に飾っておけば他の人に売れると思うよ」
すると、安中ネットさんは
「そんなことはしない。自分で使います」
と言い切った。そうとう真剣に作ったことが気迫となって伝わってきた。これを使う人は幸福な人だ。
「10日ぐらいしたら寄ってみるよ」
と言って、安中ネットさんは帰っていった。売れたら電話を下さいと言わないところに彼の覚悟を感じる。私はさっそくTさんの携帯電話にかけた。待ちこがれていたTさんは、出来た感じはどうですか、と、やつぎばやに色々な箇所の仕上がりを私にたずねてくる。
「それより自分で来て確認してくださいよ。私はTさんじゃないんですから。今晩お店はやっていますからお待ちしていますよ」
「じゃあ絶対行きますから」
その日の夜9時過ぎ、いつもの2人で来てくれた。品物をこんなふうにお渡しするお店はないと思います。たいへん申し訳ない。
「安中ネットさんがだいぶ一生懸命作ってくれたんで、悪いんですけど目をつぶって下さい。私が手渡しますから」
どうぞ、と言うとTさんも面白い人で、ネットを受け取ったまま、
「俺まだ目をつぶっているからさ。第一印象どうだい」
と、背の高いほうの人に聞いている。
「ものすごくいいよ」
「ほんとかい。紅白の色は、模様はどうだい」
「ものすごくいいよ」
「ほんとかい。今度は裏返してみてよ。どうだい」
「こっちの面もいいよ」
「ほんとかよ。ネットの櫻色はどうだい」
「悪くないと思うよ」
「ほんとかい。じゃあ、目を開けるよ。・・・うわあ、ほんとに良くできている」
おどろきの声の連続だ。私もこんなに喜んでくれるとは思わなかった。1つや2つ何か言われるかなと思っていた。安中ネットさんがもう注文で作るのはこりごりだと言ったが、それくらいがんばった気持ちがTさんに通じたようだ。私はTさんに聞いてみた。
「安中ネットさんに何かメッセ―ジはありますか」
するとTさん、
「今晩はこのランディングネットを抱いて寝ますとお伝えください」

グリップ材 = カリンバール紅白・スポルト
フレーム材 = バーズアイメープル・ウオールナット・ブラックチェリー
イタヤカリン
手編みネット = 桜色
Tさん特注品 19,800円+税
アンクルサム(群馬県安中市松井田町/電話027-393-2196)
※「マルタの雑誌」は季刊『フライの雑誌』の読者を対象としたweb投稿企画です。『フライの雑誌』読者なら楽しんでもらえそうと感じたら、フライから話題が離れてしまってもかまいません。ご投稿はinfo@furainozasshi.comまで。




















