2020年08月14日

ダマサレタ? その2


いつものように朝5時に運動の途中で白雲亭から碓氷川を覗きこむ。
私なりに考えがあり、あれから幾日か日日がたっていて、鷺のオオワシに対しての警戒感は、あの時からするとどうに変化しているか見てみたかった。
ここ数日は無風状態が続き、オオワシは足のない案山子となってしまっている。
お〜い、風さん。3月頃のうちの屋根が強風で飛ばされそうで寝られない強風は御免だけど、その100分の1ぐらいの風をさらさらと私の見ているオオワシに吹いてくれないかな?
朝の私が見ている時間帯は、鷺は一度も舞ってくれない。
その時間帯に鷺は何をしているかというと、いつもより少ないが最低1匹はいて、30メートルぐらいの距離を保って、じーと座禅のように動かない。
そこで風が吹いてオオワシが舞い始めたら鷺はどんな行動を取るかと思うと、ついつい碓氷川を覗きこんでしまう。

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そんな日々を送っていたら、フライの雑誌の編集長から電話がありあ、マズイ例の物をさぼっている?
「小板橋さん、7月にフライの雑誌が出ますのでまた、広告の資料をいつものように間に合うように写真といっしょに送って下さい。どうですかコロナの影響は。」
「うちなんかこんな田舎ですけど、もちろん地元は大切ですし頼りないフライショップですけど、けっこう意外と頼りにしていてもらっています。」
と答えた。つづけて、
「おい、どっちなんだといわれそうですけど、なるべくお客様の御希望にこたえたようと努力しているんですけど、今はコロナの影響で東京や関東のお客さんが県をまたいではいけないようですので。〈オイカワファイン〉が好調の滑り出しだったんですけど。コロナが、いつになるか分からないけど終息したアカツキを楽しみに待つしかないですね。」
「じゃ〜、小板橋さん、あの中山道の釣旅≠煢スでもいいですからお願いしますよ。」
私の脳味噌は(やはり云われてしまったな)と覚悟を決めるしかない。
「それからなるべく短くお願いしますよ。」
「じゃ〜、長く書いちゃおうかな?」 編集長は、
「長くてもいいですからお願いしますよ。」
編集長って大変だな。
「うちは、フライ屋だけどアユの解禁が近いのでアユの話でもいいですか?」
「かまわないですよ。」
アンクルサムのお店のことを思って云ってくれているん。

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じぁ〜、碓氷川の中瀬大橋にオオワシ1号に会いに行くか、あれ、名前を付けちゃった。名刺をバッグに入れて、約15分だから歩って行くかと歩き出した。もう午後3時ごろだった。
橋を渡っていると、お〜い、オオワシ1号が空を舞っている。これは編集長のおかげだ。よしよしとデジカメを取り出し、オオワシ1号にもうちょっと右側の翼を上げて旋回してねなどと独り言を云いながら、シャッターを切っていると、あれ〜。
私の頭上あたりがよからぬ雲行きで、なんとトンビが俺の縄張りだと上を旋回している。まずい、俺もどうせトンビからは丸見えだろうな。
どこか隠れるところといってもないので姿勢を低くして見たが、一定の距離を保って旋回している。
お〜い、トンビ君、これは案山子兼凧だよ〜。
トンビなどは動いているものに反応するらしいので、案山子凧など関係なく、自分のエリアに入って来た物は追い出そうとしているんだろうな。
オオワシ1号は、人間一人と白鷺一羽とトンビ一羽を、ある意味ダマシテいるんだから、人間ではないがあなたは偉い。オオワシ1号以外は生活が掛かっている。できればカワウもダマシテね。

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どうしても私がいると警戒するので距離が縮まらない。
ふと妙義山側を見る、と上流に1人釣りをしている人が見えた。エサ釣りの人のようだ。いやがるだろうなと思いつつ、石垣をスルスル降りていた。鷺やトンビと同じ行動をとっている自分がいた。
少し長い距離を保って、小さい声で、
「すいません、川まわりではないんですけど、釣れていますか?」
近くに寄るとルアーの釣人だった。釣りの支度もいい感じでセンスもいい。「なにか釣れましたか。」
「ゼンゼン釣れないですけどハヨは追って来るんですけどルアーのスプーンではね。」
オイカワファインで釣るのにハヨはちょうどいいんだけどな。ひとりごとを言っている。
私は、すいませんこんな所でこんなものを出しては大変失礼なんですけど、と恥ずかしげもなく名刺を差し出した。すると、
「私は2週間ぐらい前にアンクルサムで年券を買いましたよ。」
エー、気がつかなくて大変申し訳なかったです。
スイマセンケド、写真を撮ってもいいですか? 〈中山道の釣旅〉というのにもしかして載せてもいいですか?
「いいですよ。」
その後で、大事そうに私の名刺をポケットにしまってくれた。そんなに近くでは写真は撮らないですから、とプレッシャ―を掛けないようにいって、
「うちはフライ屋ですけど、ルアーの物は置いてないですけど、よかったらいつでも寄って下さい。ルアー釣りを楽しんでいって下さい。」
何枚か写真を取らせてもらった。

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橋の下まで戻って来たら、なんとトンビがオオワシ1号に飛びかからん勢いで、3メートルぐらいまで物凄いスピードで接近していた。と思ったらもう1羽がすぐ近くを舞っていた。
私が見た限り、オオワシ1号はその時点では無傷だった。
まるで人間の世界を見ているようだ。
立場の弱いものは、間合いをとって容易に近づかないし、互角同士は激突する。

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追伸 フライ屋ですが、上州漁協の地元、松井田地区あま沼の道案内ぐらいはさせて貰います。


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小板橋伸俊(フライショップアンクルサム/群馬県安中市松井田町)

※「マルタの雑誌」は季刊『フライの雑誌』読者が対象のweb投稿企画です。

posted by furainozasshi at 15:24| Comment(0) | 中山道の釣り旅

2020年06月12日

ダマサレタ? その1

いつものように、午前5時ごろ、運動の途中で白雲亭から碓氷川をのぞきこんだ。それから目線を、だんだんと妙義山に上げて来た。
お〜い、うす紫の妙義さん、元気か〜い。碓氷川の水量をどうにかしてくれよ〜。俺はカラ元気だぜ〜。

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う〜ん、何か変だな。いつもの景色にザワザワ感と変な動きがある。
このところ、「漢詩歳時記」という本の、春の(一)、春の(二)、夏、秋(一)、秋(二)、冬と、千何百首をコロナのお陰さまで読めちゃった。一生積んどくはずの本だったのに。
そんなことで、俺の脳味噌と目が自粛疲れをおこしちゃったかな。それとも単純に俺の目が三分の一オネンネかな。
イヤイヤ、たしかに、新中瀬大橋のたもとに不審な動きをするものがある。
あれは、薄茶色のオオワシの、95センチ級だ。その鳥が、ふつうでは考えられない、不自然な、とても小さい回転を繰り返している。
もしかして、釣り糸でもオオワシの足にからんで取れないで必死にもがいているのだろうか。
それともオオワシが何かをつかみ取ろうとしているのか。
俺は勝手に「オオワシ」といっている。
が、そんな鳥が碓氷川にいるのだろうか?

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俺はいくじなしのくせに、変に正義感が湧いてきた。1・5キロメートルくらいの距離があるのに、脳味噌と足はオオワシへ向かって歩きだしていた。
途中、よく会う犬の散歩のおじさんに会って「おはようございます」とお互いに挨拶をした。犬の散歩のおじさんが
「あれ、いつものコースと違いますねエ。」
「エェ、いつもの景色と違う所を歩ってみようと思って」
「そうですよね。気分転換になりますよね。」
へえ、この時間には、こんな道を歩いている人なんだ、と思った。
むかし、白戸さんとバンブーロッドにする竹を取りにきた竹藪を通りすぎて、狭い、細い道を下って行く。

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そして太い道に出た。
うん、あれ、前方20メートルの野原の、2メートルくらい上空を、風を受けて見えたり、見えなかったり。
さっきまでの俺の正義感と、体からあふれでる汗が一挙に凍りついた。
なんと、オオワシの案山子だった。
俺の脳味噌は
「ズルイよ、案山子って。案山子は一本足で、へのへのもへ字で麦藁帽子をかぶって、両手の先から30センチぐらいのキンキラ細いテープが光っていなくちゃ。そして土の中に足がしっかりとめり込んでなくちゃ。風を切って大空を舞う案山子なんてさ。」
俺の小さな脳味噌からすると想定外だ。
ダマサレタ。
体全体から恥ずかしいが力が抜けていくのが分かる。

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ちょっとベンカイしていいですか。だってさっき白雲亭から目を凝らしている時に、白鷺が見たことのないようなこまわりを、5回も6回も俺の頭上で舞っていた。
詐欺師じゃなくって鷺まで騙した。
オオワシの案山子、凧? にアッパレだ。
ほんとに1メートルぐらい、翼から翼まである感じだ。よし午後はまたここにきて、オオワシを捕まえることはできないがデジカメで撮ってやるぞ。
オオワシの凧? にすっかり騙された。でも何だかわからないがとても気分が爽快だ。


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午後になって、そうだ、今度は歩きではなく、車で案山子のいるあま沼までいってみよう。せっかく行くのなら狭い道の方からいこうか。
まだ鮎が解禁になっていないのでどうかと、あえて通って見た。途中から道が狭いし草や枝などがあり、やはり危ない感じがした。
着いてみると、上州漁協松井田支部の皆さんがいた。自分がお手伝いしていたころから比べると人数が半分以下になってしまったようだが、ガンバッテいるようだ。
石がごろごろしていた河原を機械を使って整地してあり、おおげさにいって車100台はOKぐらい駐められそうだ。
遠くの方から、2人が歩いて私に近づいて来た。どうもと挨拶をして、日焼けした顔を見ると、サングラスと帽子をかぶった小板橋さんだ。私より2つ先輩だ。

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「なんだや、今日は。」
「じつは新中瀬大橋のたもとで朝、しっかりオオワシに騙されてしまった。もしかして鮎を放流したのかな、と見に来たんですよ。」
「御苦労さん、ここにあと2匹も舞っているだろう。」
「え〜。ほんとだ。」
「これは、ワザワザ新潟まで行って買って来たんだぜ。」
「私は白雲亭から見たんですけどね。すかりやられちゃったですよ。」
「試しにとりつけてみたんだけど、人間が騙されちゃったかい。」
「なんとなく動きが妙だし、回転が小さくてアレーっていう感覚はあったんですけど、騙されました。」
「あれはね、竿を真直ぐにたてると糸がからんじゃうんだよ。だから微妙に角度を付けるのがコツかな。でも風が吹かなければタダの役立ずさ。」
と2人で笑う。
「ちょっと写真撮ってもいいですか。」
「かまわねいよ。オメンチは鮎の日釣券はやっているんきゃー。」
「フライ屋ですけど、(声を小さく)鮎もちょっと扱っています。」
「それじぁー、なにかの時にアンクルサムに行けば鮎の日釣券を扱っているよと紹介してやるよ。」
「いいです、いいです、碓氷川のためにこんなに色々努力してくれているんですから。」
「いやあ、俺なんかもその方が助かるんだよ。」
と云ってくれた。

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「今年の鮎は、上州漁協の管轄でも、松井田地区のあま沼が一番いいと聞いていますよ。」
「今日も午前中に5人が草刈りに、俺たちは午後に2人で草刈りさ。もうちょっとして午後4時ごろになれば鮎が餌を喰い始めるから、イッパイいるのが分かるよ、でも俺たちもそれまでには帰ってしまうけどね。」
「どうも草刈り御苦労さまでした。それから今年は鮎のおとりを碓氷川に伏せて売るそうですね。
「それが1番だんベー。」
「そうですよね。おとりは元気が命ですよね。」

上州漁協の鮎の解禁は6月13日(土曜日)です。

帰りは太い道路で妙義山美術館のほうから帰って来た。


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小板橋伸俊(フライショップアンクルサム/群馬県安中市松井田町)

※「マルタの雑誌」は季刊『フライの雑誌』読者が対象のweb投稿企画です。

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posted by furainozasshi at 15:14| 中山道の釣り旅

2019年10月02日

白戸ロッド〈オイカワ・ファイン #1・#2〉が誕生するまで

長い期間中山道の釣旅をお休みしていまして、どうもすいませんでした。

白戸さんから電話があった。

「小板橋さん、#1のバンブーロッド今作っているんです。次に持って行こうかなと思っています。」
ここのところ〈フライの雑誌〉でオイカワの特集をすると大変評判がいいんですよと電話で編集長が嬉しそうに私に語りかけてくれていたな。
あ〜もしかすると、と私の脳味噌が勝手に妄想を暴発させた。ここはメッタに無いチャンスの大波が今きているから、乗りなさいと私に声をかけて来ている。ここは白戸さんに乗るぞ。
「オイカワ用に#1・#2のバンブーロットを全力で作って下さい」
「小板橋さん、どうしちやったんですか?」
「どうもスバラシイ大波が来ているので、イヤラシイいい方で申し訳ないのですが何本作れますか?」
「5本は作りたいですね」
白戸さんは、声には出さないが随分勝手なことをいう人だなと思っているかも。こんなことをいうと白戸さんに怒られるかもしれないが、これまでこれは出来ませんとことわられたことはありません。だからといってそんなに強気で、迷惑をかけていいのかな。
そんな時、いつも不思議と編集長から電話が入る。
「白戸さんの#1・#2のバンブーロッドをオイカワ用に作ってもらいます。今度の広告に間に合えばと思うのですけど」
と話をすると、
「それっていい話ですね」
「5本作ってもらうことになっているんですけど」
編集長からアドバイスで「リールシートはコルクの方がいいですよ」とのことだった。白戸さんはウッドでも考えていたようだ。しかし編集長が言っていたよというと、白戸さんはすなおに全部コルクにするといった。
それから「ただのバンブーロッド#1・#2では、インパクトが弱いので、絶対名前を付けた方がいいですよ」とも、言ってくれた。
2人で何かいい名前をつけて、最後に編集長にも考えてもらって、決めることにしましよう。白戸さん、いい名前を考えて下さいねとお互いに健闘を誓い合った。名前って、大切だからほんとに一生懸命だったんですよ。

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白戸さんがバンブーロッドを持って来た時に、小さく折った白い用紙に四つか五つ、鉛筆で書いてあった。白戸さんが自分で読むのは照れくさそうだったので、私が覗き込むようにして声を出して読んだ。
「小板橋さんのは」と白戸さんが言うので、三個ぐらい声を出して読んだ。私も白戸さんも真剣に考えたと思うのですが、なんだか二人とも照れてしまうのはなんなんでしょうかね。
その中で私が
「オイカワ・ファインはどうですかね」
と白戸さんに聞いてみたら、即座に
「どこかにそんな名前がありましたよ」
と白戸さんに言われてしまい、いまひとつ乗る気がしない返事が返って来た。私的には大分しょんぼりしてしまい手詰まり感が漂ってきたので、そうだ編集長に電話をして聞いてみようということになった。
二人の考えたいくつかの名前を編集長に言った。不思議なものでその時は照れもせず真剣に言っている自分がいた。
すると編集長が「オイカワ・ファインがいいですね」と即答してくれた。しかし私が「白戸さんがなんとかファインってどこかで名前が出ていましたというので、没だと思っていたんですけど」と言うと編集長が「オイカワ・ファインという名前は他にありませんから大丈夫ですよ、いい感じの響きではないですか」

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白戸さんに電話して、
「オイカワ・ファインに決まりました。白戸さんが心配していたなんとかファインですけど、他にないですから大丈夫ですよと太鼓判を押してくれましたよ」
と言うと白戸さんは納得してくれた。
「次のバンブーロッドにはオイカワ・ファインと名前が入りますね」白戸さんが「私は字が上手くないから」と心配しているようなので、大丈夫、大丈夫。編集長が白戸さんのバンブーロットの字は個人的に私に好きですよといっていたから、白戸さんが思っているほど心配しなくてもOKだから。スレッドの色なんかもオイカワをイメージして色々考えてみて下さいね。
それからフェルールも竹がいいですよと編集長がアドバイスしてくれましたよ。ロッドの長さも個人差がありますから一概に言えませんけど6フィートちょっとくらいが、いいかも。
それから編集長も嬉しいことに大変個人的に興味があるそうです。それから最後にこうもいっていました。絶対真似をするひとが出てきますよ。
バンブーロッドを作らない私がいうのもオコガマシイが大丈夫です。白戸さん、自信を持ってオイカワ・ファインを製作して下さい。たとえ真似をするバンブーロッドビルダーが出てきても、白戸さんは素材にしても何種類もの竹をバンブーロットに作り今までたくさんのリピーターの人に支持されて来ているのですから。

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このあいだ埼玉県のお客さんで、白戸さんのバンブーロットを何本も買ってもらっている方ですが、「小板橋さん、今回は時間がないので」と言いながら3本あるダブルハンドロッドを見ただけで「これを下さい」と3ピースの#7 10フィート3インチの代金を払っていくので、「あの、あの、白戸さんのバンブーロットをお使いいただいているのは分かっているのですが、シングルとはダブルハンドは大分違うので、できたら表で何回かロッドを振って感覚を感じてくれませんかね」というまもなく「白戸さんのロッドでしょ。分かっているから」
えー、感覚が違うんだけどな〜。
2週間ぐらいしたある日、「このあいだはダブルハンドをどうもありがとうございました」とそのお客さんから電話が入った。私は体が硬くなるのを感じていると、「いいロッドですよ、とっても」。え〜、私の体から急に力がひいて行くのが分かる。
まだあと2本はまだありますか、はい、あります。私の声も高い声になっているのが恥ずかしいが自分で分かる。その日の午後にお店に寄ってくれて、2本を表で振り比べてくれて「どっちもいいな」といってトンキンケーンのダブルハンド・3ピース・#8 10フィートを買ってくれた。今度はロッドを振って確認してくれたので私も安心だ。
白戸さんはバンブーロッドはダブルハンドから#1・#2まで、そのほかルアーやタナゴの釣り竿も竹で作っている。そんなビルダーは少ないと思います。

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編集長から「上野村へ取材に行きますので、お店に寄ります。ぜひオイカワ・ファインを見せて下さい」という電話があった。午後に来てくれて、「真竹の#1、6フィート2インチの竹フェルールのオイカワ・ファインを買います」といいだしたので、気にいってくれたようだ。
「オイカワ・ファインの最初の広告なのでなにかインパクトのある広告を考えているんですけどいい方法はありますか」
と編集長に相談すると、「私がいつもオイカワを釣っている川で私がオイカワ・ファインを使ってオイカワを釣って広告用の写真を撮りますよ」

ほんとですか。人と人とのお付き合いが大切だと世の中いうけれどこの瞬間私は深くおかげさまで味わうことができました。

次の日の夕方、気になって編集長に電話を入れると、
「これからちょうどオイカワ・ファインを持って釣りに行くところですよ」
とのことで、
「でも今からだともう暗いのではないですか」というと「ゼンゼン大丈夫ですよ!」
編集長の心が躍っているような感覚がわたしの受話器の耳元に届いた。
スゴイな白戸さんの真竹1#のオイカワ・ファイン。

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数日後、フライの雑誌社から大きいうすい封筒が届いた。開けてみると、カラーで用紙1枚分をオイカワファインの広告だ。オイカワ・ファインと一緒に写っている、とても凛々しいつらがまえと健康美のオイカワ。それと白字のロゴ〈Oikawa Fine #1・#2〉。私はドキドキしている。
数日後〈フライの雑誌〉の117号が届いた。さっそく72ページを開いて見た。一番目立っていたのはオイカワでもなくランディングネットでもなく、名前の分からない古びたいい感じの雰囲気を醸し出しているリールでもなく、微妙にぼかして見えるオイカワ・ファインだ。控えめのようでも一番うきあがって見えるのは私だけでしようか。プラス、ロゴもいい。
白戸さんに〈フライの雑誌〉が出ましたよと電話を入れると、午前中に釣具屋さんにいって来たのですが、まだ出ていなかったですよ。しばらくして白戸さんから電話があり、開口一番「いいですね」。二人であそこがいいとか、ここが良く撮れているとか、でもほとんど私が話をしていたような気がする。

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白戸さんにどうしてオイカワファインを作ろうと思ったのか話を聞いてみた。
「〈フライの雑誌〉でオイカワの特集をしたことがありましたよね。その時に#1のバンブーロッドを作ろうと思って、作りだしましたんです」
編集長にオイカワファインの釣り味はいかがでしたか、と聞くと
「ドライの釣りは#1ラインがあっていて、#2ラインをのせるとウエットがあっています。グニャグニャしないでしっかりキャステイングできました」
あと4本あったオイカワ・ファインは、2人のお客さんが2本ずつお買いになられた。私はどれか1本はこれからオイカワ・ファインを見に来る人に見せたいし触らせたいのです、と言ったのだが、二人ともどうしても2本オイカワファインを欲しいといわれるので、私の心は鬼になれませんでした。
118号の2回目の広告の写真も編集長がやってくれるということになった。消費税が上がりますがなるべくリーズナブルな価格でいいバンブーロットを皆様に提供させていただきたいと思っております。色々な方々の御協力があってこの価格でお客様に提供できております。これからもよろしくお願いします。

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オイカワ・ファインを買ってくれた一人はしばらくしてお店に寄ってくれた。「実は私はヤマメをオイカワ・ファインで釣っているのですよ」。ちょいとちょいとオイカワ・ファインはオイカワを釣るバンブーロッドですよ。

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小板橋伸俊(フライショップアンクルサム/群馬県安中市松井田町)

※「マルタの雑誌」は季刊『フライの雑誌』読者が対象のweb投稿企画です。
posted by furainozasshi at 23:28| 中山道の釣り旅