2015年02月18日

白戸さんが来るなら俺も(二)

白戸さんが来る日はどうも雨かも。なにせ、私は雨男ですからと白戸さんに電話で言うと、小板橋さん明日は天気ですから大丈夫です。次の日、なんとものすごくいい天気で、松井田駅に白戸さんが着いた。トイレに行かれるというので私が9本分のバンブーロッドを預かった。さすがにズシリ重さを感じて、ますますバンブーロッドを拝見するのが楽しみだ。

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白戸さん、お店に行く前に竹を見に行きますか。私もあれから竹藪を見ていないので、気になるのです。いやいや、先に竿を見て下さい。それからにしましょう。

ではどれから行きますか、じゃ竹フェルールの「点々」から拝見しましょう。1本目はめちやくちや点々のオンパレードだ。点々が凄いじゃないですか。2本目は点々が少なくなっている。3本目はますます少なくなっていた。いったいこれはなんという竹なのだろうか。白戸さんが「小板橋さん、日本には数えきれないほど竹の種類はありますから、分からないということですよ。」。たしかに、決めつけることは出来ないな、じゃ面白い竹とでも、しときましょう。

今までの竹の径とは明らかに違う。トンキンケーンが約7cmぐらいだとすると、この「面白い竹」は、約3.5cm。女竹は約2cm。繊維は細くなるに従ってすくなくなる。だけど少ないから、面白いこともたくさんある様な気がする。

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竹を削っても、点々は消えなかった。点々がある竹もない竹も、アクションは変わらないと白戸さんは言った。でも白戸さんは点々が何とも魅力的のように感じているようだ。右に同じである。

バンブーロッドを袋に入れて見ると、ワン&ハーフのためにトップが約30cm長い。袋の中で折れてしまうとまずいということで、約35cmのサックを竹にプラスして急きょ作ってもらった。そして何とか約束の日までに9本分間に合せてくれた。カラフルでいい感じにサックが出来上がっている。サックはあまり深く差しこまないで下さいとのこと。

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どうして今回は9本全部ワン&ハーフにこだわったのですかと聞いた。トップ側をなるべく後に持ってくることで、大きい魚がかかった時の竿先の負担が減るからと答えてくれた。白戸さんが持ってきてくれた9本の検品が終わった。じゃ御約束の面白い竹を切りに出かけますか。

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白戸さんは「2年前に竹取りにきたときは、竹なら何でも詰め込んで持ち帰ったけれど、今回はよい物しか持ち帰らない」と、意気込んでいた。小板橋さんここですよね。そうですけど、何だか少し竹が枯れていませんか。そういえば、でもそんなに竹が枯れているというほどではないと思います。でも点々がある竹が全然ないですよ。そうですね。

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真剣に探して中々見つからない。白戸さんは点々の竹が欲しかったようで、私は少し下の方に行き全体を見て見た。青い竹はあるが、やはり点々のある竹は無く、それでも白戸さんがどうにか2本探したようだ。


「小板橋さん、これじゃ修理分の点々の竹がない」。落胆している白戸さん。ない物はどんなに逆立ちしても出てこない。今回はみつからなかったが、何年かすればまた点点のある竹が生えて来る可能性を信じましょう。今日まで2年待った訳ですから、また楽しみに待ちましょう。慰めの言葉になっていないが、そういうほかに言葉がみつからなかった。

お店に帰り、裏で白戸さんが竹をリュックサックに入るように、節ごとに切った。私がどうして黒いマジックで線を引いているのですかと尋ねると、前と後が分かるようにです、と答えてくれた。測ったようにピッタリ竹が納まった。

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そうそう小板橋さん、この面白い竹の名前なんですけどね。安中竹と名付けたらどうでしょう。

私はビックリした。白戸さんが竹の名前まで考えてくれていた。そして、白戸さんらしい所は、別に何でも構わないのですがね、と遠慮してくれることだ。それだけ考えてくれていたのに現実は2本分ぐらいしかなかった。白戸さんが何でもいいんですけどね、と私にボールを投げて来た。すぐには答えが出なかった。じゃ何か考えます。

白戸さんに、先日お客さんが作って持ってきてくれた写真アルバムを見せた。白戸さんは、沈黙のまま見ていた。私だけが一人で、いいですよねとか、綺麗ですよねとか、凄いですよねとか,言っている。白戸さんに押しつけていたようで、申し訳ありませんでした。このアルバムはそのカメラマンのお客さんが、白戸さんのバンブーロッドで、至福の時間を味わえたことへのお礼の意味で、私と白戸さんにプレゼントしてくれました。

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これ頂いていいのでですか。もちろん預かっていたのですから。私も1冊貰いましたよ。それから、違うお客さんが、「白戸さんが来るのなら、私の写真も見てやって下さい」と言って渡してくれていた、イワナの写真3枚も見せた。「これは白戸さんのつくった竹フェルールですよ」「へ〜私なんか、イワナは30cmまでしか釣ったことがありません。35cmですか凄いですね」と白戸さんも感動している。

白戸さんが「私は不器用なので、努力してここまでやってきました。2人のお客さんにくれぐれもよろしく伝えて下さい」と言った。その言葉に私は物凄い重みを感じた。1月からバンブーロッドをまたつくりはじめますとも言ってくれた。こういうお客さんの実感というか気持ちが、白戸さんのバンブーロッド製作の励みになってくれるのかな。私もその橋渡しで少しでもお役に立てれば幸せだ。

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「中山道の釣旅」のコピーを100円ショップで買ったクリアファイルに入れて渡した。アルバムもそこに入れてリュックサックに入れた。白戸さんは嬉しそうだった。長いかえりの道中、電車の中で読んでくれるかな。

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私は「面白い竹」に何と名前を付けようか考えた。「安中竹」でもいいとは思ったが、ランデイングネットでもう「安中ネット」という名前を使ってしまっている。

安中市になる前はここは碓氷郡だった。私的には碓氷郡の時代の方が長かったし親しみが今でも残っている。その竹は碓氷川からわずか100メートルぐらいの所に生息しているので、今回は竹が取れた場所に拘ってみたいと思った。「碓氷紋竹」と私は名付けた。もう一つの女竹は、竹がとれた地区が八城(やしろ)という。そこで、「八城女竹」と名付けた。

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トンキンケーンが本物か偽物かとか、どこで取れたトンキンケーンか分からないとか、いいトンキンケーンはプロのバンブーロッドビルーダーが買い占めてしまうなどと、いったいどこまでが本当か分からないような話に振り回されるよりは、私と白戸さんの目で見て、二人で歩いて行ける場所の竹が一番間違いがないと思い、そのように地元の名前をつけてみた。

両方とも数に限りがある。多くのフライマンに見てもらうために、
私は初めての試みとして碓氷紋竹の点々が一番よく出ているバンブーロッドを非売品にしてみた。「碓氷紋竹バンブーロッド3/4#7‘0“竹フェルール&ノードレスのワン&ハーフ」と決めた。もう2本は売りものです。それから「八城女竹バンブーロッド3/4#6‘11“ワン&ハーフ」と名付けた。

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白戸さんは気にいってくれるだろうか?

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小板橋伸俊(アンクルサム/群馬県安中市松井田町)

「マルタの雑誌」は季刊『フライの雑誌』読者が対象のweb投稿企画です。
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2015年02月05日

白戸さんが来るなら俺も(一)

見て、見て、Uさん。スゲイダンベー、この写真。

う〜〜ん。

うなっちゃったかい? どこかで見た事があるバンブーロッドだんべー。まるで、カタログの写真見ていだんベー。

これ白戸さんのバンブーロッドかい?

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そうさ29,500円には見えねいだんべー、10万円以上に見えないかい? 白戸バンブーロッドの7‘2“#2/3の竹フェルールでノードレスだよ。ちょっといい感じに焦げ目が入っていてさ、白戸さんが初めて竹フェルールのバンブーロッドを作ったやつさ。

俺見てねいよ。

そうかい。Uさんもけっこう店に寄ってバンブーロッドをよく見てくれているけどね。この人は買ったその日に18cmぐらいのヤマメをヒットさせたが、手元でバラしたそうだ。なれるのに30分ぐらいかかったそうだが、こんなに柔らかいバンブーロッドで初めてにしては、タイシタもんだよな。

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それから嬉しくなっちゃて、数日後に上野村の例の本谷に出かけて、渓に入ってすぐ27.5cmを釣り、午後には尺物のヤマメを釣っちゃたワケよ。バンブーロッドの穂先からグリップの近くまで満月状態だったそうだ。その次にUさんが来て、一番長いトンキンケーンの白戸さんの竹フェルールの2/3#7‘5“を買ってくれたじゃないか。

そうだったけね。

思いだした? だからこのお客さんとタッチの差で、全然関係が無いともいえねんじゃねんかな? ちょっと無理があるかな。

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さっき近いうちに白戸さんが何本かバンブーロッドを持ってくるといっていましたよね。白戸さんが来るのなら、俺も上野村の本谷で白戸さんの竹フェルールの2/3#7‘5“で釣ったイワナの35cmの写真を持って来ますよ。

数日後、さっそく、上野村の本谷で釣ったイワナの写真を3枚見せに寄ってくれた。1枚は携帯で後の2枚はデジカメで撮りました。どれがどれだかよく分からなくなってしまったが、Uさんなりに一生懸命撮った雰囲気は十分伝わって来る。イワナの35cmのデップリ感と飴色がイワナの存在感をドドドーンと感じさせる。

イワナも、もうランデイングネットの中に納まっているのに、まだ半分水の中だとフライを呑みこもうとしている。そんな獰猛さが可愛く感じる。それにUさんが意識して白戸バンブーロッドをリールと一緒に写真の中に入れている。普通のフライマンは分からないと思いますがUさんと私には分かるのです。

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へー、このランデイングネットは安中ネットさんのだよね。ネットが濃い緑で、イワナが引き立つね。Uさんの安中ネットは背中の飾りものではないようだね。

Uさんはちょっと苦笑い。

小板橋さん、本谷のイワナは放流物ではなくて、元からそこの渓にいたものだそうです。前に友人と来た時に場所を譲ったら、5分もしない内に大きい音でバシャと音がするので振り向くと友人が40cmオーバーのイワナを釣り上げていたんです。

どうもその時の悔しさからすると、35cmのイワナはUさんの中ではまだまだと思っているのかもしれない。でも立派な飴色の大イワナだと私は思いますよ。ヤマメの尺のお客さんとUさんのイワナと共通点が一つ。なぜだか白戸バンブーロッドは一番初めに大きい魚がヒットする。

その時、バンブーロッドはどうだった。満月状態だったかい。

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いやいや、逆U字型で水の中にティペットが一直線でどうなるかと思いましたよ。Uさんだからコントロール出来た様な気が私にはします。なにせバンブーロッドをうちの店からだけでも6本ぐらいは、買ってもらっていますから。でも竹フェルールのバンブーロッドで35cmのイワナは初めての経験でしょう。

竹フェルールと金具のフェルールと、どこかが違ったですかと私が質問した。するとあっけない答えで「まったく同じ番手で同じ長さでは無いから比べられない」。本人意外と冷静だ。

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そうそう、近いうちに白戸さんが9本ほどバンブーロッドを持ってくるが、今度も有難いことに色々チャレンジしてくれていて、ワン&ハーフで9本。2年前かな、二人で地元の竹2種類を伐った。そのうちの1種類に点々がいい具合に出ているやつを竹フェルールで作ってくれたんだ。白戸さんも随分お気に入りとのことで私は大変今回は楽しみにしているんですよ。もう1種類は女竹でそれも楽しみなんですよ。

またちょくちょく寄らせてもらいますよ。

写真ありがとうね。しっかり白戸さんに見せておくよ。

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(つづく)

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小板橋伸俊(アンクルサム/群馬県安中市松井田町)

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