神奈川の義理の兄貴が「今年は群馬県で春季関東地区大会がある年だよね」と話しかけて来た。何年かに一度各県に回って来る。今年の群馬県はどこが強いんだい? 私は高崎の健大高崎を応援しているんです。校歌が好きなんです。英語で始まるし、現代的で、優しい感じがする。甲子園に行けたら一勝でも多く勝ってこの校歌を全国の高校野球ファンに聞いてもらいたい。特に女性ファンに聞いてもらいたい。
高校野球の伝統校の校歌はどちらかというと堅い感じがする。それはそれでいいのですが、健大高崎のように現代的な校歌もいいのではないかと私は思う。それには、まず県内の強豪校を打ち破って、校歌を歌って、自分たちで伝統を作る。20年後にはそれが普通になっていたりしたら、高校野球も試合だけでなく面白みが膨らむのではないか。
健大高崎の野球部は監督が一から創ったと聞いている。何年もしない内に甲子園に行くようになった。甲子園に今までになかったことを考えた監督で、1番から9番まで全員が走れる選手だ。相手のチームがそれを意識しすぎて、あっという間にヒットを打った選手が1塁から2塁へ盗塁して、次の選手のヒットでホームインしてしまう。だから1試合何十個と盗塁が多い。
だれも考えないことを考えて、やって、伝統に風穴をあける、そういうところが私は大好きなんですよと、兄貴に話した。
兄貴に、神奈川県は今年はどこが強いのですかと聞くと、即座に横浜高校だねと答えた。よほど今年の横浜高校は強いんだなと思った。
さて、第68回関東春季地区大会が群馬県で行なわれた。18校が激突。ただし主催県は4校出られる。ところが気がついた時には群馬県第二シードの健大高崎が、神奈川県第一シードの横浜高校に2対3で一回戦負け。おーい、俺の気持ちをどうしてくれるんだよ〜。くじ運が悪い。
だらしない私はもう関東地区大会なんかどうでもいいやと急に興味が薄れていたが、気になって群馬テレビを見たら、前橋育英高校が準決勝に進出している。
たしか前橋育英高校野球部の初代監督は、私の地元、松井田町の出身の人だと聞いている。だからか分からないが、前橋育英には松井田町東中学校の生徒や下仁田の生徒が意外といるのである。前橋育英高校が全国優勝した時も、下仁田の生徒や妙義の生徒が混じっていた。
というわけで、前橋上毛新聞球場の準決勝戦にやって来た。前橋育英高校の相手は、関東第一(東京1位)強い高校だ。たのむぜ、名前負けしないでくれよ、と前橋育英側のバクネット裏に陣取った。1回、2回と両者0点だったが、3回の裏に前橋育英が先制の1点を入れた。落ち付け、落ち付け、まだ1点だぞ。気がつくと前橋育英がヒット11本に対して、関東第一はヒット1本。群馬県にこんなピッチャーがいたのか。エース番号でもないのに。とうとう7回に、8対0でコールド勝ちした。
明日の決勝のピッチャーは1番エースが投げる。これ以上のピッチャーがほんとに前橋育英にいるのか。野球の神様がいたら今日の試合の半分の点数を、明日の決勝戦に分けてくれませんか。これほんとの気持ちです。
準決勝第2試合目は、山梨2位の日本航空と、神奈川1位、横浜高校の対戦だ。1回の表、いきなり横浜高校の猛打が爆発。5点が入る。2回には3点。横浜高校が13対0でコールド勝ちだ。こんな横浜高校に、私たちの前橋育英高校は、明日の決勝戦で勝てるのだろうか。今日の育英高校は強かった。でも横浜はもっともっと強かった。
平日なので決勝戦に来てしまった。お店のお客さんすみません。試合が始まったがスタンドを見回すと、私は群馬県人として大変恥ずかしい。前橋育英高校の地元なのに、スタンドの応援席はどう見ても横浜高校のファンでいっぱいだ。試合前から勝負はついていた感が大であった。群馬県人は野球ということでなくても変に冷めているところが見受けられるような気がする。(ほんとは熱いんですけどね)
そういう私は横浜寄りに陣取っている。横浜高校の応援席の人々は、女性も男性もファションが違う。高い服を身につけているというのではなく、自分に合っている服装をしている。それが田舎者からすると垢ぬけてカッコイイ。その証拠に東京で『フライの雑誌』の編集長とあったりすると、開口一番、小板橋さんどうしたのですか、お店にいる時と服装が違うじゃないですか、といわれてしまう。たしかに私も今日は普段と違う服装をしている。
試合が始まった。前橋育英のピッチャーの背番号が1番だ。いよいよエースの登場だ。そのエースが、横浜高校の4番を簡単に抑えこんでしまった。野球の神様ってほんとにいるのかな?と思っていたら、3回の表に安中出身の選手が2塁で出塁したことから2点が入り、5回には3点が入り、先発の右腕投手が強力な横浜の打線を、7回の裏の1点だけに封じ込めた。
私の前の席に横浜から来ただろうファンの2人がいた。やっぱりダントツの得点差で勝たなければ意味が無いよなと1人の40代の男性が、深川めしに、チューハイていうやつですか、アルミ缶に酒と書いてあった。どうも横浜の形勢が不利で、最後の方になると春季は本当の野球じゃない、勝ったところで大したことはないと言い、試合終了のサイレンが鳴り響いたら、そそくさと退散して行った。
前橋育英の先発の佐藤君は1失点完投で5対1だった。何と下仁田の西野牧の出だ。私のフライショップにも何人か西野牧のお客さんが来てくれる。共通して言えることは素朴で、超真面目な方ばかりだ。下仁田はネギとこんにゃくが全国的に有名だ。下仁田ネギのあの図太さが体幹を鍛え、こんにゃくが柔軟性をもたらすのだろうか。
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神奈川の兄貴から、「セ・パ交流戦のチケットが2枚手に入ったよ」と電話があった。私がいま大変興味があるのは、日本ハムの大谷と中田だ。日ハム戦も平日券ならあるという。やったー。兄貴が「大谷は日曜日しか投げないよ」。それでもいいです、行きます行きますと答えた。
姉が野球観戦の前に、鎌倉観光の一日を計画してくれていた。北鎌倉駅前の「光泉の稲荷ずし」は人気で予約をしないと買えないという。姉がお昼に予約を入れてくれた。松岡山東慶寺で、おすすめの岩タバコを見に行った。次に明月院へ行った。たくさんの紫陽花の中を紫陽花の数と同じぐらいの、人人人の中を掻き分けて歩いた。興味がなさそうな兄貴は外で待っていた。
天台宗大蔵山の杉本寺に、杉本観音を見に行った。姉の話では、鎌倉で一番古いお寺だそうだ。ベンチで食事をしてもいいというので、光泉の稲荷ずしを開けた。なが細いいなりずしで、真中から切ってあった。品のある味だった。
最後に寄った報国寺は、建武元年(1334)に創建された、臨済宗・建長寺派の禅宗寺院だ。休耕庵という塔頭の跡に孟宗竹が生え、現在の「竹の庭」になりましたと拝観券に書いてあった。作務衣を着たお寺の関係者らしき年輩の女性が歩いて来たので、孟宗竹と真竹の違いは分かりますかと声をかけてみた。孟宗竹は節に1本、真竹は節に2本筋がありますと明快に答えてくれた。
私の地元には、鎌倉のような大仏や大寺院や武家の歴史はないけれど、中山道の板鼻宿、安中宿、松井田宿、坂本宿、それに碓氷峠が持っている歴史的魅力ははかり知れない。私のお店は旧中山道に面している。だが今は、地元の人ですらだれも歩いている姿がないというお寒い町になってしまっている。ぜひ中山道を季節のよい時に歩いてみて下さい。
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なんだか兄貴が落ち着かないそぶりに私には見えた。どうも兄貴は鎌倉よりDNAの横浜球場の方が気になるようだ。く行って私に練習風景から見せてあげたいと思っているようだ。姉は野球はよく分からないから私は帰ると言った。
関内駅のちょっとブリッジ風になっている上には、横浜DNAのブルーのヘルメットにBの頭文字がついて、斜め左上に黄色の星が輝いている。鉄道会社と地元ファンの心意気がよく出ているなと強く感じた。DNA横浜球場の周り、大きい緑色の葉をたくわえた木々よりまだ高い所に、横浜のYをかたどった照明塔が2基もある。まるでキリンが長い首をのばして、こんなに高い緑の葉は誰も食べることはできないだろうといわんばかりに私を見下ろしてくる。
歩を進めるとちょっとした公園があり、試合前に食事をしょうということになった。横浜駅で兄貴が買ってくれたハンバーグがメインの弁当とサラダと麦茶を美味しくいただいた。これは兄貴が私に気を使ってくれたようだ。40年ぐらい前、東京の兄貴と巨人戦を観に行った。まだ屋根なしのころの後楽園球場だ。ものすごいすりばち状の高いスタンドの席で、兄貴がお弁当を奢ってくれたのだが、高所恐怖症の私には、まるで大きい飴玉を噛まずに呑みこむような感覚でどうにお弁当を食べたのだったか。お弁当の中身は忘れたが、あの時の恐怖は今も思い出される。そんな話を神奈川の兄貴にしたからかもしれない。
古いユニフォームを着た大洋ホエールズのマスコットに行きあった。今日の試合はこのユニホームで試合をするようだ。最近申し訳ないが昔のことはよく覚えていて、上尾高校からドラフト1位で大洋ホエールズにピッチャーで入団した新町のスポーツ店の倅がいて、その親戚に連れて行ってもらった後楽園球場の一番前の席で、その倅の名前を大きい声で連呼した。長島選手もそろそろ引退の時期だったような気がした。その日も不思議とお弁当のことは何にも覚えていない。選手の顔がよく見えたことだけはおぼえている。
試合が始まった。DNAの攻撃になるとライト側の外野席の人たちがほとんど全員が立ち上がる。DNAのバッターにはそれぞれの歌がある。私の席の真上の人が応援団長なのか、歌い出すとまわりの人がそれに合わせて歌い出す。
私は田舎者なので、大きい音といえば救急車のパプーハプーとか、パトカーのサイレンとか近くの半鐘のサイレンぐらいしか聴いたことがない。そんなことで今まで生きてきた。しかしこの応援団長らしき男は、なんと私の頭の上20センチぐらいのところで、聴いたことがない金属音を叩きだす。とても私の脳味噌には我慢できない。残念ながら最後までこの、世にも珍しい、聴いたことがない音に打ちのめされながら試合を観るはめになった。
私のお目当ては、日本ハムの中田と大谷で、DNAは筒香ただ一人。しかし日本ハムの先発・高梨の前に4回までノーヒットだ。ある回、私の頭上に、前の席からとてつもなく大きくて青い横断幕が、あっと思う間もなく滑るように覆いかぶさって来たと思ったら、そのまま波のように下に消えていった。スタンドは満席だ。安中市の人口が約6万人だが、DNAの今宵の試合に3万人近く入っている。田舎者には信じられない。何だか異様な雰囲気だ。
試合の方は白熱していて、9回表までお互いに0対0だ。日本ハムの栗山監督が嬉しいことに代打大谷を指名してくれた。はるか彼方のバッターボックスに大谷の姿が見えた。残念ながら大谷は三振してしまった。でも私にはただ者ではないオーラを感じ取ることができた。生の大谷を実感できた喜びは大きかった。
試合はここからが凄かった。9回表、日本ハムの攻撃1死2塁で代打矢野(元巨人)が告げられた。セ・パ交流戦だから普段は戦わないにも関わらず、矢野はホームランを打つから打たせては駄目だとファンの悲痛な声がまだ終わらないうちに、カーン。ファンの悲鳴の中、ボールが弧を描いてホームランになって9回の表に2点が入ってしまった。
9回の裏、DNA2死無走者。もうだめかと思ったら四球。続く四番筒香がなんと左翼へ同点2ランを放って、延長戦になった。ファンは皆総立ちだ。普段の生活で、私はウグイスやトンビやセミの声や渓流の川の水の音しか聴いていない。ものすごいことが目の前で起きているにもかかわらず、田舎者の私は席から立つこともできずに一人だけ浮いていたが、俺だって、俺だって、脳味噌の中ではドンチャン騒ぎだぜ。
筒香の同点2ランの熱気が納まらない中、延長10回表2死から左翼にフラフラと高く舞い上がった白球は、レフトポール際に飛び込んだ。ファールか?と思っていたら、レフト側の日本ハムのファンから怒号のような大歓声が上がり、津波のように押し寄せてきた。
ライト側も皆総立ちだ。人と人の狭いあいだから、ベースをゆっくり回る選手の姿がかすかに見えた。中田選手だ。それまでなかなか打てなかったがバッターボックスに入ると物凄くオーラが出ていた。10回裏、日本ハムの鍵谷にDNAは3人でピシャリと抑えられて、2対3でDNAは日本ハムに負けたのである。
球場の中は何とも表現のしようがない雰囲気が漂っていた。もう立ち直れない、という感覚がムンムンしている。兄貴は帰ろうと、席を立った。私は筒香と矢野と中田のホームラン3本に、バッター大谷も見ることができて、大満足だった。
球場の外に出ると物凄い人・人・人だ。兄貴が「試合に勝てば、こんなに静かではなくて、もっと活気があって、皆んなものすごく元気なんだけどね」と言った。兄貴は「たくさん試合を見てきたが、こんな試合は今までに見たことがない」といった。そして、「今度はDNAが試合に勝って、グラウンドで花火を打ち上げるのを見せてあげたい」とぼそっと言った。
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もうすぐできます、できますと言いながら遅くなって、大変ご迷惑をおかけしていた白戸バンブーロッドのダブルハンドが4本と、渓流用バンブーロッドが7本でき上がりましたので、紹介させて下さい。
写真上から(コルクが1番長い物から)
ダブルハンド・トンキン(3ピース)
#8 10‘0“ 39,500円(税込)
ダブルハンド・トンキン(3ピース)
#7 10‘4“ 39,500円(税込)
ダブルハンド・トンキン(3ピース)
#7 10‘3“ 39,500円(税込)
ダブルハンド・トンキン(3ピース)
#6 9‘9“ 39,500円(税込)
写真(向かって右側から)
トンキン(2ピース)メタルジョイント
#3 7‘5“ 29,500円(税込)
真竹(2ピース)竹フェルール・オイルフイニッシュ仕上げ
#3 7‘3“ 29,500円(税込)
真竹(2ピース)竹フェルール・オイルフイニッシュ仕上げ
#3 7‘3“ 29,500円(税込)
真竹(2ピース)竹フェルール・オイルフイニッシュ仕上げ
#3 7‘2“ 29,500円(税込)
淡竹(2ピース)メタルジョイント・ノードレス・ワン&ハーフ
#3−4 6‘11“29,500円(税込)
真竹(2ピース)メタルジョイント
#3 6‘9“ 29,500円(税込)
真竹(2ピース)竹フェルール・オイルフイニッシュ仕上げ
#3−4 6‘6“ 29,500円(税込)
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小板橋伸俊(アンクルサム/群馬県安中市松井田町)
※「マルタの雑誌」は季刊『フライの雑誌』読者が対象のweb投稿企画です。
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