2016年10月25日

東京オリンピックまで、マ・テ・ナ・イ。2016年JAPAN CUP国際女子ソフトボール大会ソフトボールの女神に会えた。11年ぶり2回目の優勝を目撃した。

もう何ヵ月か前になるが、新聞で地元高崎の城南球場で「ジャパンカップ国際女子ソフトボール大会in高崎」が開催されるという小さい記事が私の目に留まった。2020年東京オリンピックにまだソフトボールが正式種目に決まっていなかった。エースの上野(ビックカメラ高崎)はその頃は好い年になっているだろうなと思いながら、私は漠然と自分の手帳に印をしていた。

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上野投手の現役はもうあまり見られないかもしれないし、今回はなにより上野投手の本拠地である。これを見ずにはいられない。当日、もう朝9時には城南球場の駐車場にいた。壁に貼ってあるポスターを見ておどろいた。当日券は2500円だそうだ。ドキドキしながらポーチの中の財布の中身を確認すると、5000円札と1000円札が2枚、やれやれ大丈夫だった。

オーストラリア・チームがグラウンドで練習を始めた。オイオイ、でっけ〜。八頭身だ。恥ずかしいが私の田舎ではめったに外国人の人を見ることがない。しいて挙げれば軽井沢の教会の牧師をしているアンクルサムさんかな。次にファースト側でアメリカ・チームが練習を始めた。オーストラリアの選手より背が低く、男性並みのキビキビしたプレイだ。

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アメリカの攻撃で幕は上がった。アメリカ選手たちは円陣を組んで「ウ〜〜〜」とオタケビのような、大きい声を発した。すると私の後ろの女性が「サイレンのような声を上げるのね」と言った。

私の右側の席に、赤いTシャツの大会関係者らしき年輩者が4人ばかり座っていた。1人の女性が通りがかり、その4人組みは、「どうしてもここに座れ、あなたのために席を取っておいたんだから」といいだした。女性は「じゃ座ります」といって私の隣に席を取った。どうも只者ではないようだ。色々な関係者が通るたびに、その女性は挨拶をしたり、されたりしている。私は恥ずかしいのでチラとしか見られない。

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試合の方はアメリカが2回に2点を入れて、オーストラリアが4回にホームランをレフトに放り込んだ。私の脳味噌はあまりにもソフトボールのことを知らないので、暴発寸前だ。隣の女性にいきなり質問をしていた。「スイマセン、あのセンターのところのオレンジ色の電光掲示板で数字が20ぐらいからだんだん減って、また繰り返しになっているのはドウシテですか」。

髭を生やした年寄りに、女性は「時間を短縮するため、20秒以内にピッチャーはバッターに球を投げないといけないんですよ。20秒をすぎるとボールとカウントされるんです。バッターは10秒以内にバッターボックスに入らないといけないことにルールではなっているんですよ」。

へ〜。私は矢継早に質問をした。

「さっきアメリカのバッターがデッドボールで退場しました。たしかに時速100km以上のスピードで当たれば痛いでしょうけど、ソフトボールって柔らかいのではないですか」。

すると女性は言った。「あれは硬球です。」

「高校ぐらいから、大学と社会人は硬球です。国際試合は全部硬球です」。

私は62年間知らなかった。女性は、この髭親父はそんなことも知らないでソフトボールを観に来ているのか、なんて顔をしないで説明をしてくれる。いつしか私の脳味噌は「女神様」と名付けていた。

女神様が「群馬はビックカメラ高崎チームの世界1のピッチャー(上野選手のこと)が怪我をしているうちに、1人いい子が出て来ているんですよ。それに上野の後継者でやはり地元の太陽誘電に藤田という投手がいるんですけど、ピッチャーも凄いが打つ方でも凄いんです。二刀流ですね」と教えてくれた。

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トヨタ自動車、日立、ホンダ、ビックカメラ高崎と、世界的に知名度がある会社ではない。太陽誘電なんて知らない会社なんていわないで、2020年東京オリンピックソフトボールのエースで胴上げ投手になるかもしれません。二刀流の藤田倭選手を覚えておいて下さい。

ビックカメラ高崎の宇津木レイカ監督が、なんと私の前で女神様と立ち話している。私の席の隣の隣に座っていた30代の女性がレイカ監督に「スイマセン色紙にサインして下さいとおいおい色紙とマジックを渡した。「いいですよ」とサインをしてもらっている。試合の方は結局3対1でアメリカが勝った。最後に選手が全員グランドに出て握手をして試合終了だ。

私の脳味噌は「ところであなたは何者ですか」と女神様に聞きたくてたまらないのだが、小心者なので最後まで聴きだせなかった。どうもオリンピックで金を取ったときの選手の1人かもしれない。あるいは、ソフトボールジャーナルの編集をしているか記事を書いている人かもしれない。今回は東京から来て3日間高崎に泊まって試合を観戦すると言っていた。午後8時近く、今日はありがとうございますとお礼を女神様に言って、高崎城南球場を後にした。

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翌日、どうせ決勝戦はアメリカ対オーストラリア戦と思っていたら、新聞に、なんと「日本対アメリカ戦」の活字が踊っている。今日の決勝戦は午後6時からだそうだ。お客様すいません、自営業ですから。午後にはまた2500円を払って城南球場に座っていた。

決勝が始まる前に、タイペイ対オーストラリア戦があった。この日は私の隣の席は女神ではなく、スタイルのいいおねいさんだった。チラと横目で見たら、私の手首の太さより細い左足の踝のちょっと上に、どう見ても龍が上に向かっているタトゥーが可愛らしく見えた。タイペイの応援に来たらしい。イヤラシイがさらにちょこっと視ると、左手のくるぶしに小さい文字盤サイズの時計ぐらいの薔薇の花の絵に、トゲがからみついているタトゥーだ。わお〜。でも全然イヤラシクない。

オーストラリアが4対1でタイペイを破って、オーストラリアが3位タイペイが4位に確定した。

いよいよ、アメリカ対日本の試合が始まった。1回の表、二刀流の藤田がピッチャーで登板した。時速105kmと球速が表示された。日本にこんな投手がいたんだ。日本は初回、長崎(トヨタ自動車)、山本(ビックカメラ高崎)の連続適時2塁打などで4点先制。アメリカの先発投手が乱調で、勢いに乗った打線は2回と3回にも加点し、投げては先発の藤田倭(太陽誘電)が2安打1失点の好投で試合をつくった。

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5回表、北京五輪の金メダル獲得に貢献したエース上野が、怪我で遠ざかっていた国際試合のマウンドへ1年ぶりに登場した。「ピッチャーユキコ・ウエノ。ナンバー17」のアナウンスが流れると、どの選手よりも大きな拍手と歓声が球場を包んだ。

北京五輪の熱闘413球から、もう8年もたっている。年齢的に無理があるのではないかと思ったら、アメリカの投手だって時速105kmぐらいなのに、上野選手のスピードは肩慣らしの球で110km〜114kmだ。上女神様が、上野よりも経験値が高い投手は他に誰もいないといいきっていたのを思い出した。

結局、日本は米国をなんと9対1の5回コールド勝ち。2005年以来6大会ぶりに世界の頂点に立った。11年ぶり2回目の優勝だ。

球場のあちこちで、ヒーローインタビューや記念写真をとっている。優勝の熱気が冷めやらず内野席も物凄い状態でだれも帰らない。城南球場の内野席が満杯なんて見たことがない。これはすぐには出られないと思い、最後の方まで残っていたら、赤いスタッフのTシャツを着た女子高校生たちが大きいビニール袋を持って、スタンドのごみを拾い始めていた。「皆さんは高校生ですか」と私が聞くと「健大高崎です」と答えた。「ご苦労さま、おじさんは健大高崎の高校野球のファンなんだよ」と言うと、なんともよい笑顔を私にふるまってくれた。

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日本のソフトボールは、世界でトップ争いをしている。ビックカメラ高崎の上野、浜村、我妻、山本、二刀流の藤田、佐藤、2ランホームランの河野と、日本チームの屋台骨を群馬県選手がになっている。それなのに群馬にはソフトボール専門の球場がないのは残念だ。群馬県や高崎市はひと肌脱いでくれないかな。

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球場の外に出ると、アメリカチームのバスが選手専用の入り口に停まったまま、なかなか出られない事態になっている。なにごとかと暗いなか目を凝らすと、小学生、中学生、高校生の女子が黒山のように待ち構えていた。アメリカの選手が一人バスに乗り込むたびに、黄色い声っていうんですか。ワ〜ァワ〜ァキャ〜ァキャ〜ァと球場の壁と道路の壁で何倍もの反響効果でものすごい。若いっていいね。アメリカの選手は試合に負けたし疲れているだろうに、バスの窓をあけて日本語で「どうもありがとう、ありがとう」と、ファンにちゃんと挨拶してくれていた。

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小板橋伸俊(アンクルサム/群馬県安中市松井田町)

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2016年08月28日

高校野球第68回春季関東地区大会と横浜DNAと白戸さんの新しいバンブーロッド

神奈川の義理の兄貴が「今年は群馬県で春季関東地区大会がある年だよね」と話しかけて来た。何年かに一度各県に回って来る。今年の群馬県はどこが強いんだい? 私は高崎の健大高崎を応援しているんです。校歌が好きなんです。英語で始まるし、現代的で、優しい感じがする。甲子園に行けたら一勝でも多く勝ってこの校歌を全国の高校野球ファンに聞いてもらいたい。特に女性ファンに聞いてもらいたい。

高校野球の伝統校の校歌はどちらかというと堅い感じがする。それはそれでいいのですが、健大高崎のように現代的な校歌もいいのではないかと私は思う。それには、まず県内の強豪校を打ち破って、校歌を歌って、自分たちで伝統を作る。20年後にはそれが普通になっていたりしたら、高校野球も試合だけでなく面白みが膨らむのではないか。

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健大高崎の野球部は監督が一から創ったと聞いている。何年もしない内に甲子園に行くようになった。甲子園に今までになかったことを考えた監督で、1番から9番まで全員が走れる選手だ。相手のチームがそれを意識しすぎて、あっという間にヒットを打った選手が1塁から2塁へ盗塁して、次の選手のヒットでホームインしてしまう。だから1試合何十個と盗塁が多い。

だれも考えないことを考えて、やって、伝統に風穴をあける、そういうところが私は大好きなんですよと、兄貴に話した。

兄貴に、神奈川県は今年はどこが強いのですかと聞くと、即座に横浜高校だねと答えた。よほど今年の横浜高校は強いんだなと思った。

さて、第68回関東春季地区大会が群馬県で行なわれた。18校が激突。ただし主催県は4校出られる。ところが気がついた時には群馬県第二シードの健大高崎が、神奈川県第一シードの横浜高校に2対3で一回戦負け。おーい、俺の気持ちをどうしてくれるんだよ〜。くじ運が悪い。

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だらしない私はもう関東地区大会なんかどうでもいいやと急に興味が薄れていたが、気になって群馬テレビを見たら、前橋育英高校が準決勝に進出している。

たしか前橋育英高校野球部の初代監督は、私の地元、松井田町の出身の人だと聞いている。だからか分からないが、前橋育英には松井田町東中学校の生徒や下仁田の生徒が意外といるのである。前橋育英高校が全国優勝した時も、下仁田の生徒や妙義の生徒が混じっていた。

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というわけで、前橋上毛新聞球場の準決勝戦にやって来た。前橋育英高校の相手は、関東第一(東京1位)強い高校だ。たのむぜ、名前負けしないでくれよ、と前橋育英側のバクネット裏に陣取った。1回、2回と両者0点だったが、3回の裏に前橋育英が先制の1点を入れた。落ち付け、落ち付け、まだ1点だぞ。気がつくと前橋育英がヒット11本に対して、関東第一はヒット1本。群馬県にこんなピッチャーがいたのか。エース番号でもないのに。とうとう7回に、8対0でコールド勝ちした。

明日の決勝のピッチャーは1番エースが投げる。これ以上のピッチャーがほんとに前橋育英にいるのか。野球の神様がいたら今日の試合の半分の点数を、明日の決勝戦に分けてくれませんか。これほんとの気持ちです。

準決勝第2試合目は、山梨2位の日本航空と、神奈川1位、横浜高校の対戦だ。1回の表、いきなり横浜高校の猛打が爆発。5点が入る。2回には3点。横浜高校が13対0でコールド勝ちだ。こんな横浜高校に、私たちの前橋育英高校は、明日の決勝戦で勝てるのだろうか。今日の育英高校は強かった。でも横浜はもっともっと強かった。

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平日なので決勝戦に来てしまった。お店のお客さんすみません。試合が始まったがスタンドを見回すと、私は群馬県人として大変恥ずかしい。前橋育英高校の地元なのに、スタンドの応援席はどう見ても横浜高校のファンでいっぱいだ。試合前から勝負はついていた感が大であった。群馬県人は野球ということでなくても変に冷めているところが見受けられるような気がする。(ほんとは熱いんですけどね)

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そういう私は横浜寄りに陣取っている。横浜高校の応援席の人々は、女性も男性もファションが違う。高い服を身につけているというのではなく、自分に合っている服装をしている。それが田舎者からすると垢ぬけてカッコイイ。その証拠に東京で『フライの雑誌』の編集長とあったりすると、開口一番、小板橋さんどうしたのですか、お店にいる時と服装が違うじゃないですか、といわれてしまう。たしかに私も今日は普段と違う服装をしている。

試合が始まった。前橋育英のピッチャーの背番号が1番だ。いよいよエースの登場だ。そのエースが、横浜高校の4番を簡単に抑えこんでしまった。野球の神様ってほんとにいるのかな?と思っていたら、3回の表に安中出身の選手が2塁で出塁したことから2点が入り、5回には3点が入り、先発の右腕投手が強力な横浜の打線を、7回の裏の1点だけに封じ込めた。

私の前の席に横浜から来ただろうファンの2人がいた。やっぱりダントツの得点差で勝たなければ意味が無いよなと1人の40代の男性が、深川めしに、チューハイていうやつですか、アルミ缶に酒と書いてあった。どうも横浜の形勢が不利で、最後の方になると春季は本当の野球じゃない、勝ったところで大したことはないと言い、試合終了のサイレンが鳴り響いたら、そそくさと退散して行った。

前橋育英の先発の佐藤君は1失点完投で5対1だった。何と下仁田の西野牧の出だ。私のフライショップにも何人か西野牧のお客さんが来てくれる。共通して言えることは素朴で、超真面目な方ばかりだ。下仁田はネギとこんにゃくが全国的に有名だ。下仁田ネギのあの図太さが体幹を鍛え、こんにゃくが柔軟性をもたらすのだろうか。

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・・・

神奈川の兄貴から、「セ・パ交流戦のチケットが2枚手に入ったよ」と電話があった。私がいま大変興味があるのは、日本ハムの大谷と中田だ。日ハム戦も平日券ならあるという。やったー。兄貴が「大谷は日曜日しか投げないよ」。それでもいいです、行きます行きますと答えた。

姉が野球観戦の前に、鎌倉観光の一日を計画してくれていた。北鎌倉駅前の「光泉の稲荷ずし」は人気で予約をしないと買えないという。姉がお昼に予約を入れてくれた。松岡山東慶寺で、おすすめの岩タバコを見に行った。次に明月院へ行った。たくさんの紫陽花の中を紫陽花の数と同じぐらいの、人人人の中を掻き分けて歩いた。興味がなさそうな兄貴は外で待っていた。

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天台宗大蔵山の杉本寺に、杉本観音を見に行った。姉の話では、鎌倉で一番古いお寺だそうだ。ベンチで食事をしてもいいというので、光泉の稲荷ずしを開けた。なが細いいなりずしで、真中から切ってあった。品のある味だった。

最後に寄った報国寺は、建武元年(1334)に創建された、臨済宗・建長寺派の禅宗寺院だ。休耕庵という塔頭の跡に孟宗竹が生え、現在の「竹の庭」になりましたと拝観券に書いてあった。作務衣を着たお寺の関係者らしき年輩の女性が歩いて来たので、孟宗竹と真竹の違いは分かりますかと声をかけてみた。孟宗竹は節に1本、真竹は節に2本筋がありますと明快に答えてくれた。

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私の地元には、鎌倉のような大仏や大寺院や武家の歴史はないけれど、中山道の板鼻宿、安中宿、松井田宿、坂本宿、それに碓氷峠が持っている歴史的魅力ははかり知れない。私のお店は旧中山道に面している。だが今は、地元の人ですらだれも歩いている姿がないというお寒い町になってしまっている。ぜひ中山道を季節のよい時に歩いてみて下さい。

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なんだか兄貴が落ち着かないそぶりに私には見えた。どうも兄貴は鎌倉よりDNAの横浜球場の方が気になるようだ。く行って私に練習風景から見せてあげたいと思っているようだ。姉は野球はよく分からないから私は帰ると言った。

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関内駅のちょっとブリッジ風になっている上には、横浜DNAのブルーのヘルメットにBの頭文字がついて、斜め左上に黄色の星が輝いている。鉄道会社と地元ファンの心意気がよく出ているなと強く感じた。DNA横浜球場の周り、大きい緑色の葉をたくわえた木々よりまだ高い所に、横浜のYをかたどった照明塔が2基もある。まるでキリンが長い首をのばして、こんなに高い緑の葉は誰も食べることはできないだろうといわんばかりに私を見下ろしてくる。

歩を進めるとちょっとした公園があり、試合前に食事をしょうということになった。横浜駅で兄貴が買ってくれたハンバーグがメインの弁当とサラダと麦茶を美味しくいただいた。これは兄貴が私に気を使ってくれたようだ。40年ぐらい前、東京の兄貴と巨人戦を観に行った。まだ屋根なしのころの後楽園球場だ。ものすごいすりばち状の高いスタンドの席で、兄貴がお弁当を奢ってくれたのだが、高所恐怖症の私には、まるで大きい飴玉を噛まずに呑みこむような感覚でどうにお弁当を食べたのだったか。お弁当の中身は忘れたが、あの時の恐怖は今も思い出される。そんな話を神奈川の兄貴にしたからかもしれない。

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古いユニフォームを着た大洋ホエールズのマスコットに行きあった。今日の試合はこのユニホームで試合をするようだ。最近申し訳ないが昔のことはよく覚えていて、上尾高校からドラフト1位で大洋ホエールズにピッチャーで入団した新町のスポーツ店の倅がいて、その親戚に連れて行ってもらった後楽園球場の一番前の席で、その倅の名前を大きい声で連呼した。長島選手もそろそろ引退の時期だったような気がした。その日も不思議とお弁当のことは何にも覚えていない。選手の顔がよく見えたことだけはおぼえている。

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試合が始まった。DNAの攻撃になるとライト側の外野席の人たちがほとんど全員が立ち上がる。DNAのバッターにはそれぞれの歌がある。私の席の真上の人が応援団長なのか、歌い出すとまわりの人がそれに合わせて歌い出す。

私は田舎者なので、大きい音といえば救急車のパプーハプーとか、パトカーのサイレンとか近くの半鐘のサイレンぐらいしか聴いたことがない。そんなことで今まで生きてきた。しかしこの応援団長らしき男は、なんと私の頭の上20センチぐらいのところで、聴いたことがない金属音を叩きだす。とても私の脳味噌には我慢できない。残念ながら最後までこの、世にも珍しい、聴いたことがない音に打ちのめされながら試合を観るはめになった。

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私のお目当ては、日本ハムの中田と大谷で、DNAは筒香ただ一人。しかし日本ハムの先発・高梨の前に4回までノーヒットだ。ある回、私の頭上に、前の席からとてつもなく大きくて青い横断幕が、あっと思う間もなく滑るように覆いかぶさって来たと思ったら、そのまま波のように下に消えていった。スタンドは満席だ。安中市の人口が約6万人だが、DNAの今宵の試合に3万人近く入っている。田舎者には信じられない。何だか異様な雰囲気だ。

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試合の方は白熱していて、9回表までお互いに0対0だ。日本ハムの栗山監督が嬉しいことに代打大谷を指名してくれた。はるか彼方のバッターボックスに大谷の姿が見えた。残念ながら大谷は三振してしまった。でも私にはただ者ではないオーラを感じ取ることができた。生の大谷を実感できた喜びは大きかった。

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試合はここからが凄かった。9回表、日本ハムの攻撃1死2塁で代打矢野(元巨人)が告げられた。セ・パ交流戦だから普段は戦わないにも関わらず、矢野はホームランを打つから打たせては駄目だとファンの悲痛な声がまだ終わらないうちに、カーン。ファンの悲鳴の中、ボールが弧を描いてホームランになって9回の表に2点が入ってしまった。

9回の裏、DNA2死無走者。もうだめかと思ったら四球。続く四番筒香がなんと左翼へ同点2ランを放って、延長戦になった。ファンは皆総立ちだ。普段の生活で、私はウグイスやトンビやセミの声や渓流の川の水の音しか聴いていない。ものすごいことが目の前で起きているにもかかわらず、田舎者の私は席から立つこともできずに一人だけ浮いていたが、俺だって、俺だって、脳味噌の中ではドンチャン騒ぎだぜ。

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筒香の同点2ランの熱気が納まらない中、延長10回表2死から左翼にフラフラと高く舞い上がった白球は、レフトポール際に飛び込んだ。ファールか?と思っていたら、レフト側の日本ハムのファンから怒号のような大歓声が上がり、津波のように押し寄せてきた。

ライト側も皆総立ちだ。人と人の狭いあいだから、ベースをゆっくり回る選手の姿がかすかに見えた。中田選手だ。それまでなかなか打てなかったがバッターボックスに入ると物凄くオーラが出ていた。10回裏、日本ハムの鍵谷にDNAは3人でピシャリと抑えられて、2対3でDNAは日本ハムに負けたのである。

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球場の中は何とも表現のしようがない雰囲気が漂っていた。もう立ち直れない、という感覚がムンムンしている。兄貴は帰ろうと、席を立った。私は筒香と矢野と中田のホームラン3本に、バッター大谷も見ることができて、大満足だった。

球場の外に出ると物凄い人・人・人だ。兄貴が「試合に勝てば、こんなに静かではなくて、もっと活気があって、皆んなものすごく元気なんだけどね」と言った。兄貴は「たくさん試合を見てきたが、こんな試合は今までに見たことがない」といった。そして、「今度はDNAが試合に勝って、グラウンドで花火を打ち上げるのを見せてあげたい」とぼそっと言った。

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もうすぐできます、できますと言いながら遅くなって、大変ご迷惑をおかけしていた白戸バンブーロッドのダブルハンドが4本と、渓流用バンブーロッドが7本でき上がりましたので、紹介させて下さい。

写真上から(コルクが1番長い物から)

ダブルハンド・トンキン(3ピース)
#8 10‘0“ 39,500円(税込)

ダブルハンド・トンキン(3ピース)
#7 10‘4“ 39,500円(税込)

ダブルハンド・トンキン(3ピース)
#7 10‘3“ 39,500円(税込)

ダブルハンド・トンキン(3ピース)
#6 9‘9“  39,500円(税込)

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写真(向かって右側から)

トンキン(2ピース)メタルジョイント              
#3 7‘5“  29,500円(税込)

真竹(2ピース)竹フェルール・オイルフイニッシュ仕上げ
#3 7‘3“  29,500円(税込)

真竹(2ピース)竹フェルール・オイルフイニッシュ仕上げ
#3 7‘3“  29,500円(税込)

真竹(2ピース)竹フェルール・オイルフイニッシュ仕上げ
#3 7‘2“  29,500円(税込)

淡竹(2ピース)メタルジョイント・ノードレス・ワン&ハーフ
#3−4 6‘11“29,500円(税込)

真竹(2ピース)メタルジョイント
#3 6‘9“  29,500円(税込)

真竹(2ピース)竹フェルール・オイルフイニッシュ仕上げ
#3−4 6‘6“ 29,500円(税込)

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小板橋伸俊(アンクルサム/群馬県安中市松井田町)

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2016年06月03日

今年もお約束の第42回安政遠足(とおあし)侍マラソンの日がやって来た。

安中市の旧安中藩武家屋敷を出発点に、選手1,871人が仮装して健脚を競った。市の合併10周年を記念して定員を200人増やした。関所・坂本宿コース(20.15キロ)と(峠コース28.97キロ)の2コースで実施。女子マラソンの谷川真理さんがゲスト出場し、節目に華を添えた。

写真を見ながら第42回安政遠足マラソンをふりかえってみましょう。先導白バイのライダーは女性だった。

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いたいた、さすが早い方だと思います。谷川真理さんとお友達が袴姿で私の前を走って行く。真理さん気合の入り過ぎではないですか? 真理さんの右手の指が握っている所が真剣だったらとんでもないことになっているのではないですか?

地元の上毛新聞に谷川真理さんのコメントが載っていた。

約2時間で関所・坂本宿コースのゴール「碓氷峠の森公園くつろぎの郷」に到着した。谷川さんは「こんなに応援の人が出る市民マラソンも珍しい。人の触れ合いがあり、お祭りのように記憶に残る大会」と振り返った。市民ランナーから選手に転身して東京国際女子マラソンなどで優勝した谷川さんは、タイムを意識した通常のレースと異なる空気に新鮮さを覚えた。前夜祭では出場者から「前夜祭と本番で別の仮装を用意してきた」と聞き、驚いたという。

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侍マラソンの前にひとこと。安中市が松井田町の旧碓氷郡と合併してはや10年になる。今回は記念大会になるようだが私の脳味噌はまだまだ安中市民にはなれないでいる。頑固な碓氷郡生まれの脳味噌がいる。そこでランナーが碓氷峠の熊野神社までゴールする前に、松井田町と碓氷峠がどんなに重要な関係にあったか歴史の勉強をしてみよう。ただしあてにならない私の脳味噌の話として、お付き合い願いたい。

天正18年(1590年)、今から426年前、北条方の三家老の一人、大道寺駿河守政繁なる人物が松井田城主であった。碓氷峠がどれほど大事な位置を占めていたかが役職だけでも分かる。豊臣秀吉の命令で前田利家が指揮官として、松井田城の西碓氷峠側に陣を張り、東の江戸側には今大河ドラマで注目されている真田昌幸が陣を張り、北側には九十九川の榛名山側に小諸の依田康國が陣を張り、南側には碓氷川を挟んで上杉景勝が陣を張った。今でも八城などという地域が碓氷川の所にある。

松井田城は山城で、特に碓氷川側は、急斜面で難航不落の城で攻めづらく、結局兵糧攻めで水がつき、四月二十日松井田城落城。豊臣秀吉と松井田城との攻防戦は終った。大道寺駿河守政繁は埼玉県の川越に連行され七月十九日に切腹させられた。小田原城も七月五日に落城して、北条氏はここに滅んだ。

加賀前田家(石川県)利家は、このあと平和の時を迎えた慶長三年(1598年)に、はるばる金沢から草津温泉に滞在して湯治をしている。彼は名湯であることを知っていた。松井田城攻防戦の時に、松井田は全部火を付けられて燃えてしまっている。

426年前にそういう歴史があったことを踏まえて大河ドラマ真田丸などを見ると、歴史観が変わって見えて来るのではないか? 文化や歴史を知ることで、地に足がついた考え方が出来るのではないか。

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さて、平和な現実に戻りましょう。

うまくゴール出来ますように。繊細なランナーかも。靴の上に蹄をかぶせている。

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ヒゲの常連さん。男性か女性か。男性かな?

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赤い帽子がマリオでいいのですか? グリーンの帽子は何ていうのかな。ゲームをしないからおじさんには分からない。赤帽子と緑の帽子の組み合わせで走って行くランナーがけっこうたくさんいるよ。

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よく分からないのですが「ガリガリくん」って、アイスキャンデイの袋に絵が書いてあるやつですか。おじさんはもうついて行けない。ちょうどアイスキャンデイが顔にかぶってしまつている残念。一緒に走っている他のランナーたちが仮装ランナーを見て笑って走って行く光景は結構多い。

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またまた何のキャラクターか分からないが、カメラを持っているおばさんの、私も若い頃はスタイルがあのくらいだったと思っているようなふきだしを付けたい笑顔がホホエマシイ。

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島崎憲司郎さんへ。彼女の背中のウイングを水生昆虫のフライに応用できないですか。

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元気で明るい女版の一心太助。足に白いマニキュアをそれとなく塗っているあたりも、女の子らしい。

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刀が頭蓋骨を貫通して右肩には矢が貫通していてそれなのに元気で走っている。お姉さんも軽く苦笑い。

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安中市の病院の先生か看護師さんか。本物のガリガリくん?をかじりながら。仕事柄忙しいのか、どうしても走ってしまうのかな?

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日本一の富士山には驚かされた、なんと薄くポケットのように見える場所からニョキと手が出て来て、子供たちとタッチをして行った。そんな手があったか。右側の人にも左側の人にも見えるように、ホッペには初日の出が一個ずつ塗ってある。仮装をほんとに楽しんでいるランナーだ。

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この神主と巫女さんは親と子供か。それに身に纏っているものも本物ではないか。靴は黒足袋と白足袋のように鼻緒が書いてある。父親は大変楽しく嬉しいのではないか。

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槍の刃の部分が、らせん状に薄くオレンジ色に輝いている。電池を使って光らせているようだ。回りが明るいので気が付かない。やけに刃の部分が長いなとは思ったが、兜の炎が大きくて濃いオレンジ色なので、つい目を奪われてしまった。その炎はやけに濃く出ているがやはり電球が入っているようだ。この侍は工業系だな。

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よくテレビにコマーシャルに出て来ている、体格の良い女装の男性の仮装。ずいぶん顔が苦しそうに見えるのは私だけでしょうか。

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21世紀のおそまつ君。

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前垂れに「川越」と白い字で書いてある。剣道の防具と竹刀を持って面も付けてどのくらい重量になるのか。そうとう重いと思う。野球の子供が右手を伸ばして握手でもしようとしたのか。そうしたら剣士が子供に水筒を置きなさい、竹刀を両手でしっかり持ちなさい。剣士は左手で竹刀の真中を握り、大きい声で自分の面に竹刀を当て「め〜ん」とひとこと言って、左右確認をしてランナーとして走り去った。

この「川越」の剣士は、426年前に豊臣秀吉の命令で真田昌幸、前田利家、上杉景勝と、川越の殿様でもあった大道寺駿河守政繁が松井田城の攻防戦をおこない、破れて川越に連行され切腹をさせられたことを御存じか。川越の剣士ランナーと碓氷峠や松井田宿は長い歴史の縁(えにし)で結ばれているのですよと、声を大にして教えてあげたい。私の目の前で松井田の子供に剣の道の精神を伝授してくれる。素晴しい。

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熊本の皆さん。くまもんが走って応援をしていますよ。今回の侍マラソンでは、くまもんの仮装のランナーが一番多かったかも知れない。熊本・大分を応援するランナーたち。早い復興を願っています。どうもこの3人は兄弟ではないですかね?

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ぼく、天気は好いし喉が渇いたかもしれないけど、イチゴシロップたっぷりのかき氷を飲みすぎたらお腹を壊しちゃうぜ。

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出ました上毛かるた。帽子をかぶってネギを笊の上に置き、左手に大きいかるた。下仁田ネギとコンニヤクが旨そうに描いてある。弟が下仁田ネギを触りたいと左手を上げると、お姉ちゃんがあれは造り物だから触ってはいけないと弟を阻止しているのかな。

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猫のぬいぐるみです。犬と違い中々飼い主のいうことを聞かないし、首輪をつけないせいか自由である。子供の野球チームの子供たちとハイタッチをしている。

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2カ月がかりで完成させたという、高さ2メートルのダンボール製白衣観音像をかぶって登場。地元の言い伝えだと高崎の白衣観音像でデートすると、白衣観音像は女性なのでやきもちを焼いて、二人は一緒になれないといわれています。

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走って来た女性の友人がドリンクを2本持って待っていたらしく、一緒に写真を撮る撮らないでえらい騒ぎをしているようだ。

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こちらの姉弟はミッキーマウスを待っていたのか。お姉ちゃんが積極的に弟より前に出て、小さい左手を目一杯広げてミッキーとタッチしていた。ずいぶん嬉しそうだった。これで1回浦安のディズニーランドに行った気分になってくれただろうか。今の子供たちはそんな程度ではだめだというかもしれないな。

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三度傘と旅烏とサングラス姿の馬場さんが、いつになく苦しそうに駆けて来た。馬場さんはこれでたしか70歳は超えていると思う。すごいな。

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赤鬼、青鬼、緑鬼、黒鬼。緑鬼はでっかい金棒ではなく、小さいウクレレを持って走っている。途中でハワイアンでも弾いてくれるのかな。

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少年野球の監督が「時間だからみんな帰るぞ」と号令をかけていた。野球のユニフォームを着てゆっくりと歩いて来たランナー2人が、「オイオイ、こんなに野球の子供たちがいるところで俺たち歩けないよ。」といきなり駆けだした。

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もうほとんど終わりに近く、応援する人もちらほらというぐらいの時に、ドーンとお腹が出た相撲とりのぬいぐるみふうなランナーが、苦しそうに駆けて来た。周りにほとんど人がいなかったので、「四股名は何ていうのですか」と聞くと、苦しいのか「忘れた」とだけ答えて駆けて行った。

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後にはランナーが走れなくなったら乗るバスが見える。そんな時、大きいくまもんが私をめがけて歩道を駆けて来た。もしも渓流だったら腰を抜かして動けなくなっていただろう。そんなわたしにやさしく、くまもんから握手をしてくれた。走り去って行くくまもんの後ろ姿を見たら、髪の毛がポニーテールだった。

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小板橋伸俊(アンクルサム/群馬県安中市松井田町)

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posted by furainozasshi at 17:45| 中山道の釣り旅