2015年02月05日

白戸さんが来るなら俺も(一)

見て、見て、Uさん。スゲイダンベー、この写真。

う〜〜ん。

うなっちゃったかい? どこかで見た事があるバンブーロッドだんべー。まるで、カタログの写真見ていだんベー。

これ白戸さんのバンブーロッドかい?

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そうさ29,500円には見えねいだんべー、10万円以上に見えないかい? 白戸バンブーロッドの7‘2“#2/3の竹フェルールでノードレスだよ。ちょっといい感じに焦げ目が入っていてさ、白戸さんが初めて竹フェルールのバンブーロッドを作ったやつさ。

俺見てねいよ。

そうかい。Uさんもけっこう店に寄ってバンブーロッドをよく見てくれているけどね。この人は買ったその日に18cmぐらいのヤマメをヒットさせたが、手元でバラしたそうだ。なれるのに30分ぐらいかかったそうだが、こんなに柔らかいバンブーロッドで初めてにしては、タイシタもんだよな。

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それから嬉しくなっちゃて、数日後に上野村の例の本谷に出かけて、渓に入ってすぐ27.5cmを釣り、午後には尺物のヤマメを釣っちゃたワケよ。バンブーロッドの穂先からグリップの近くまで満月状態だったそうだ。その次にUさんが来て、一番長いトンキンケーンの白戸さんの竹フェルールの2/3#7‘5“を買ってくれたじゃないか。

そうだったけね。

思いだした? だからこのお客さんとタッチの差で、全然関係が無いともいえねんじゃねんかな? ちょっと無理があるかな。

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さっき近いうちに白戸さんが何本かバンブーロッドを持ってくるといっていましたよね。白戸さんが来るのなら、俺も上野村の本谷で白戸さんの竹フェルールの2/3#7‘5“で釣ったイワナの35cmの写真を持って来ますよ。

数日後、さっそく、上野村の本谷で釣ったイワナの写真を3枚見せに寄ってくれた。1枚は携帯で後の2枚はデジカメで撮りました。どれがどれだかよく分からなくなってしまったが、Uさんなりに一生懸命撮った雰囲気は十分伝わって来る。イワナの35cmのデップリ感と飴色がイワナの存在感をドドドーンと感じさせる。

イワナも、もうランデイングネットの中に納まっているのに、まだ半分水の中だとフライを呑みこもうとしている。そんな獰猛さが可愛く感じる。それにUさんが意識して白戸バンブーロッドをリールと一緒に写真の中に入れている。普通のフライマンは分からないと思いますがUさんと私には分かるのです。

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へー、このランデイングネットは安中ネットさんのだよね。ネットが濃い緑で、イワナが引き立つね。Uさんの安中ネットは背中の飾りものではないようだね。

Uさんはちょっと苦笑い。

小板橋さん、本谷のイワナは放流物ではなくて、元からそこの渓にいたものだそうです。前に友人と来た時に場所を譲ったら、5分もしない内に大きい音でバシャと音がするので振り向くと友人が40cmオーバーのイワナを釣り上げていたんです。

どうもその時の悔しさからすると、35cmのイワナはUさんの中ではまだまだと思っているのかもしれない。でも立派な飴色の大イワナだと私は思いますよ。ヤマメの尺のお客さんとUさんのイワナと共通点が一つ。なぜだか白戸バンブーロッドは一番初めに大きい魚がヒットする。

その時、バンブーロッドはどうだった。満月状態だったかい。

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いやいや、逆U字型で水の中にティペットが一直線でどうなるかと思いましたよ。Uさんだからコントロール出来た様な気が私にはします。なにせバンブーロッドをうちの店からだけでも6本ぐらいは、買ってもらっていますから。でも竹フェルールのバンブーロッドで35cmのイワナは初めての経験でしょう。

竹フェルールと金具のフェルールと、どこかが違ったですかと私が質問した。するとあっけない答えで「まったく同じ番手で同じ長さでは無いから比べられない」。本人意外と冷静だ。

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そうそう、近いうちに白戸さんが9本ほどバンブーロッドを持ってくるが、今度も有難いことに色々チャレンジしてくれていて、ワン&ハーフで9本。2年前かな、二人で地元の竹2種類を伐った。そのうちの1種類に点々がいい具合に出ているやつを竹フェルールで作ってくれたんだ。白戸さんも随分お気に入りとのことで私は大変今回は楽しみにしているんですよ。もう1種類は女竹でそれも楽しみなんですよ。

またちょくちょく寄らせてもらいますよ。

写真ありがとうね。しっかり白戸さんに見せておくよ。

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(つづく)

・・・・・

小板橋伸俊(アンクルサム/群馬県安中市松井田町)

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2014年12月27日

まさかの流鏑馬

「生涯学習のふるさと塾 藤岡方面」という歴史探訪の募集が回覧板で回って来た。見ると高山社跡が含まれている。いま富岡市の「富岡製糸場と絹産業遺産群」が大変盛り上がっている。高山社跡(藤岡)も絹産業遺産群に含まれている。

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チャンスが無いと藤岡まで行く事もないので、行ってみようと予約の電話を入れると、もう予約は全部埋まっています。え〜駄目ですか?そこの所を何とかならないですかね。早く予約の電話を入れたつもりだったんですけどね。先着順ですから。駄目ですかね? やっぱり今一番盛り上がっている出来事だから人気があって、当り前だよな、タイムリーな企画だよな、残念だ。あ〜ぁ〜。

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次の日の午前中、電話が鳴った。聞きなれた女性の声で、「小板橋さん、歴史探訪何とか都合を付けました」。とのこと。「どうも有難うございました。もう半分以上諦めていたんですよ」「今回の企画は人気があってあーという間に予約が埋まってしまったんです」「無理いって悪かったね」「そのかわり補助席になるかもしれませんよ」「全然OK!」。電話の向こうのNさんとは何十年の付き合いで、私が歴史好きだということをよく知っているので、むりに何とかしてくれたのだろう。ほんとに有難う。

今回のコースはほとんど知らない所だ。どこにでもあるお寺や古墳や神社で、唯一高山社跡がメインのプログラムだ。先生もオクユカシイ人で、「説明する役が私でいいのだろうかと? ほんとは行きたくないんですよ」とマイクでいきなりいいだして、笑わせた。先生頑張って、皆を今日は楽しませて下さい、という雰囲気でバスは甘楽、吉井、藤岡とスケジュールを順調にこなしていった。

藤岡市の南外れの「土師神社」に着いた。

「土師の辻」とは「相撲辻」のことで、屋外で行った相撲の土俵とその場所を意味しています。 つまり、土師神社のある相撲辻ということです。「日本三辻の一」と称されています。何故ここに相撲の土俵(祭場?)があるのでしょう。それは、土師神社に野見宿祢(のみのすくね)という神が祀られているからです。古墳時代に埴輪を焼いた土師部(はじべ)の人々が祖神として祀りました。その野見宿祢は埴輪と相撲の祖として有名です。「土師の辻」は相撲の土俵を形取り、伏せたすり鉢状の土盛りで、高さ160cm、上円径495cm、基部径13mで祭場を象徴しています。

高さ160cmとは、結構高さがある。目が回るかもしれないが、160cmを転がり落ちて来る間に変な力が抜けて、かえって怪我が少ないのではないか? 観客が押しつぶされてしまうかも? 

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土俵へ上がってみたいという気持ちはあったが自分が一番先に上がるのはと躊躇していたら、一人の体格のいい人が上がったら、何人かが我先にと上がり、女性も上がった。その時は赤信号皆で・・・の勢いで、私も恥ずかしいが10番目ぐらいに上がってみた。一番先に上がれない、情けない自分がいた。土俵から下を見下ろすと、土俵の周りに長方形の石が一定の間隔で立っていた。縄文時代の埴輪さんに囲まれて見つめられているような感覚がわたしの頬を風のように通り過ぎた。

オクユカシイ先生がぼそぼそと話し始めた。

実は10月に、この土師神社で流鏑馬をしているんですよ。そういえば、杉の木が一定の間隔で、100メートルはあるだろうか? 田舎の神社でも100メートルも直線で敷地があるなんて中々ない。流鏑馬はどういうものかとは、知っていたが、漢字で流鏑馬(やぶさめ)て、こういう漢字を書くことも知らなかった。えー。群馬県で流鏑馬が見られるのか?

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流鏑馬なんか他の県の出来ごとのように思っていた。たとえば栃木県の日光とか?と思っていたら、先生が今は馬もいないし流鏑馬を出来る人も地元ではいない。日光から流鏑馬をしている人にお願いをして、馬も全部お願いするのだと言っていた。

その話を聞いてから、今年の流鏑馬にはまだ間に合う。見たい、見たい病が私の脳味噌を飛び出して私の全身を馬のように駆けまわっている。先生によると、杉の木の下を物凄い勢いで馬が走り、的に矢を当てる。100メートルの杉の木の両側に、2000人ぐらいの見物人が並んで、息を呑んで、見守るそうだ。そんな話を聞かされた。

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やっと、藤岡市の流鏑馬を見る日が来た。絶対期待は裏切らないだろうと、子供のころの遠足の前の日のようなウキウキ感で、お弁当を作った。栗めしご飯だ。栗の渋を取らず、ご飯にもいい色がつくように、デッカイ栗を幾つも入れた。朝一で自分の家の柿を取り、皮をむいて包丁で十字に切った。味噌汁の代わりにコーヒーを作り、ボトルに流し込んだ。

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40年以上藤岡方面は行っていない。美九里東小学校からあとは徒歩でという話だったが、カーナビなんかついて居ない相棒の車でも、間違えないで着くことができた。始まりまでまだ2時間半はある。校庭の入り口の所に2人年輩者と若い人がハッピを着ていた。

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ここはフライフイッシングと同じで、大事な情報収集をしよう。私は年輩者に声をかけた。

すいません、土師神社まで、ここからどのくらいかかるのですか?
そうさあ、な〜歩いて10分ぐれいじゃねいか? 
今日私は初めて流鏑馬を見に来たんですけど、どの辺がいい写真を撮れますかね?
そうさな、的は2か所あってな、何て言ったって最初の的だんベー、スタートからあるていど、準備が出来るだんべー、2か所目は矢を一から準備しなくっゃなんねだんべー。ほれ、馬の上でさ〜だから2か所目のほうが難しいかもしれねいな、いい写真を撮るのならヤッパリ一番最初の的だんべ〜。東側は報道陣の場所だから、矢も飛んでくるからな、おたくはプロかい。
とんでもない2万円するかしないかのデジカメです。
それじゃ西側がいいよ。
馬は何頭ぐらいですか。
わかんねいけど、3頭じゃねいか?
何回ぐらいして貰えるのですか?
去年は2回ぐらいだったよな。(と若い人に聞いていた)

若い人が棒切れで、土の上に地図を書いてくれた。大変分かりやすかった。お陰さまでそうとうの情報量が手に入った。私は深々と頭を下げた。

あんちゃんいい写真を撮ってくれよ。私は素人ですから。といって車に戻った。

はやめのお昼を頂こうと栗飯弁当を開き、いい色に染まった半分に切った大きな栗をポンポン口の中に放り込んだ。ほとんど栗をほうばっているようだ。贅沢な昼飯だ。そうとう高い栗ようかんだって、こんな大粒の栗のレンパツはないぜ。柿も自然のいい甘さで、ちょうどいい。それに温くなった。コーヒーを味噌汁代わりに口の中に流し込む。

2000人も見物客がくるのなら早く行っていい場所を取らなければ。女の人が畑の道を歩っているので、少し早歩きで追いつき、すいません土師神社はどちらか、分かりますかねと尋ねると、地元のものだと言った。私もそこへ行くのでと言うことで、一緒に歩きだした。ここは何が特産物ですか? イチゴです。それにトマトです。あそこに見える土手というか堰堤は何ですか? 神流川ですよ。
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土師神社に着いた。二本高々とのぼりがそびえたっていた。地元のおばちゃん連中は慣れているようで、小さい椅子を皆用意して来て、漬物やお菓子など皆で回して酒はないが、まるでワハハガヤガヤ宴会のような騒ぎだ。

南側の朱色の鳥居の方から、法螺貝の音色がここちよく私の耳に忍び込んで来た。本物の法螺貝の音色を聞くのは初めてだ。山伏が吹く法螺貝は、これから修行が始まるという感覚のどこかおもおもしい感覚に私には聞こえるが、土師神社の法螺貝は、どこにでもいる親父さんが、これから花馬行列と獅子舞が通るよ、始まるよと言っているようで、ここちよかった。

神社の建物の方で獅子舞が始まりそうだ。おばちゃんたちに大きい声で、すいません、獅子舞をどうしても見たいので、ここの場所を取っておきたいので、いいですかね? いいよ、と言ってくれた。ボトルと印刷物を杉の木の下においた。なんだか川で暗いうちに釣り道具を置いて、場所取りをしているようで気が引けたが、人間土壇場になると、本性をあらわすもんだ。情けない気持ちが勝っちゃった。

獅子が日本刀をくわえて舞う獅子舞を見るのは初めてだ。日本刀を獅子の口に縛るのは物凄く大変なようで、担当の人は息を呑んで集中している。私たちには分からないが担当者には分かるようで、時々獅子舞いを中断して、ゆるんだ日本刀をまたしっかりと獅子の口に日本刀を縛り付ける。その都度、大人が扇子で下から子供に風を送ってやり獅子をまた体に縛ってやる。大人も子供も大変だ。ほんとに真剣勝負で、獅子舞いを長時間舞った小学生さんご苦労様でした。

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ちょっと離れた場所に仮設の馬小屋があり、3頭の手入れがされた馬が1頭ずつ鉄パイプで区切られている。流鏑馬をする人が、支度を整えて、1頭1頭にやさしく、ほんとにいたわるように世話をしていた。馬もしあわせだろうし、これから2000人の観客のど真中を駆け抜ける馬を落ち着かせる意味もあるのだろう。それにしても丁寧に馬の世話をしている。鞍など2人がかりで、優しく装着している。馬に装着する道具類もお互いに大切に、大切に手渡ししている。まだ若そうな八頭身の外人さんも、馬の世話をしている。アメリカ人ならカウボーイだろう。黙って準備をしている。

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花馬行列が始まった。3頭の他にもう1頭小ぶりの馬が顔に黄色いマスクをかぶり、背に手作りの紙の花をこれでもかと付けて、保存会の人たちに引かれて行く。いよいよ流鏑馬が始まるようだ。

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1頭の馬に乗った白髪頭の品のある年長者が、流鏑馬姿の2人に馬の綱を引かせて、ゆっくりと行進して来た。さっきのおばあさんたちが、「あの人が一番偉い人だ」といっていたら、的の前でとまり、物凄い大声でイヤーァーと気勢を上げた。

的に矢を射ろうとしている。観客から地鳴りのようなうお〜〜〜ぉと歓声が上がった。と思ったら、今度は爆笑の笑い声に変わった。弓矢から矢がはなれず、矢が御辞儀をしている。私からすればよく矢を地面に落とさなかったと思う。そこからが大物は違う。何事も無かったように、打ち直しをして、派手な何と言うのか知らないが頭のかぶり物が朱や青や黄色の短冊の様な物がこれでもかと付いているのをひらひらさせて、胸を張って堂々と私の前を通り過ぎていった。

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大物は真剣にやったのだろうが、本人は矢をはなしたつもりが、皮の手袋の様な物をはめているので、矢はそのままで、下に落ちてしまったのだろう。よく矢を下に落とさなかっただけ偉い。本人は失敗してしまったのだろうが、2000人の観客を大爆笑させた。やはり大物だ。

実はわたしも30年ぐらい前に磯部温泉の弓道場で弓道を少しかじったことがある。そこには同級生の女の子が段持ちでいた。私のヘッピリ腰に比べて、白足袋に藍色の袴に藍色の胸当て頭に白の鉢巻きと、所作事が決まっていて、おまけに美人だ。その当時の写真を載せます。わたしにもまだ黒い髪の毛があったんだな。残念だがもうその弓道場はない。

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流鏑馬がいよいよ始まる。「出て来たよ」と観客の声が聞こえたと思ったら、来た。デジカメを覗くと馬の尻尾しか写っていない。また、あーという間に的を撃ち抜いて、もう馬は視界からない。こんな調子だと馬のオッポだけで終わってしまうぞ。3回目ぐらいに、外人さんが馬と共に的に向かってきた。見事に命中、的は割れて飛び散った。的の高さが日本人用のようで、若い外人さんは姿勢を少し低くしてなおかつ、上から斜めに矢を放っているように私には見えた。さすがカウボーイのお国だ。それに馬に跨っている姿はさすが八頭身で、ひじょうに映える。カッコイイってな感じ。

今回は3頭が4回ずつ流鏑馬を見せてくれた。

たくさん撮った写真の中に、ぶれているが信じられない1枚があった。矢が的に当たり白鳥がまるで羽ばたいている様に板が舞っている。それに、これ以上ベストの状態はないぐらい気を配っているように馬の目が語っている。これこそ人馬一体だ。

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私の体の芯はまだまだ熱いが、気がつくともうロープが外されて、今まで流鏑馬で走った馬の足跡や人間の足跡が細かい砂の中にめり込んで残っていた。流鏑馬の的の割れた板が拾われていたので、もしかしてその板を貰えるのかなと思っていたらそのまま片付けて、持っていってしまった。

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帰り道に女性2人と会い同じ道を帰った。もう5年通っているそうだ。随分いいカメラをお持ちでと話すと、女性は「どちらかというと流鏑馬で的に当てるよりは、的を当てた後の帰りの高揚感の様な感覚を、カメラに納められればと思っているんですけどね」と言った。そんな複雑な精神状態をカメラに収めようとする感性恐るべし。

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私は的を矢で当てる瞬間を撮ることに汲々としていた。私は目先のことしか見えていない。

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車をとめていた美九里東小学校に着いた。すると今朝の年輩者の人がいて、「いい写真は撮れたかい」と声をかけてくれた。いやあ、馬が速くて全然駄目でした。あれ、ここの小学校には土俵があるのですか? 現在群馬県内で土俵がある小学校はここしかないと思うよ? へえ、ちょっと見させて下さい。初代の横綱の名前も書いてあるよ。4本柱で屋根まで付いている。立派な土俵だ。

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やはり土師神社の三本辻の関係だろうか。地元の人が歴史と文化を大事に継承しているからだと思いたい。今年は相撲で逸ノ城が凄い。逸ノ城が横綱になったらぜひぜひ土師神社に土俵入りを奉納して、美九里東小学校の横綱と真剣勝負をして貰えないかな。

流鏑馬を披露して下さった人たちは、なんだかモンゴルの人に似ていたように私には見えた。

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小板橋伸俊(アンクルサム/群馬県安中市松井田町)


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2014年11月26日

バンブーロッドでドキドキしたお客さん

まさか、あれ、そうかもしれない


あ。電話だ。受話器を取ると、お客さんが近いうちにバンブーロッドを見に来たいとのことだ。あまり名前を名乗らないお客さんが多い中、名乗ってくれた。大変ありがたい、ではお待ちしていますと受話器を置くと、あれ私にしたら大変覚えやすい名字だったので、たしか最近見たような気がしたな? その時はもうお店の『フライの雑誌』を何号だっけかなと一生懸命ページを捲る自分がいた。


まさか、あれ、そうかもしれない、いやきっとそうだ。


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〈アンクルサムの広告を見て、「中山道の釣旅」を読んでハマりました。小板橋さんの文章良いですね。お人柄が頭に浮かびます。私は歴史小説が好きで通勤電車内ではずっと文庫本を愛読してきましたが、30年フライフィッシングをやって、やっとバンブーロッドにこんにちはです …〉


ドウショウ〜と私の心臓の鼓動は高鳴るばかりだ。どんな人なんだろうどんなお客さんなんだろう、「中山道の釣旅」も意識して回数なんか見たことがなかったが、何と今回で99号になる。自分でもへぇ〜という感じだ。私も電車で東京に行くことがあって通勤時間帯になることも多いが、そんな中、スマホかタブレットて言うのですか?で、「中山道の釣旅」を読んでくれていると思うと、難しい言葉を知らない文章力のない私のような人間はとても恥ずかしい。


いつも思っているのだが、ほんとにフライの雑誌社さんは有難い存在である。やっと、お客さんがどんな人なのかと妄想を膨らませる日がついに終わる日がやって来た。お店の入り口の鈴が、いい感じで鳴った。いらっしゃいませ。お電話をいただいた、お客さまですかそうです。私が想像していた感じの人より、優しそうな感覚の人に見えた。それに初めてなのに、もう何十年も前からお付き合いをしている感覚を感じるのが不思議だ。


30年もフライフイッシングをやって、ついに


30年もフライフイッシングをやり、ついにバンブーロッドの世界にコンニチハーというように待ちに待ったフライマンには、やはり女神がついているのだろうか? 運がいいです。ちょうど白戸ロッドの竹フェルール・バンブーロッドの5本が全部そろったところです。お客さんは「バンブーロッドは初めてだ」と言うが、お店の中をいろいろ見た結果、竹フェルールが目にとまった様で、私もそれぞれのバンブーロッドの特徴を説明させて貰った。


結局、ノードレスの所々に焼色がいい感じで見えている白戸バンブーロッド(トンキンケーン)#2/3の7フィート2インチを選んだ。最初のバンブーロッドにしては柔らかすぎるかなと思ったが、さいわいノードレスだったので、言葉で言うのは難しいが、どちらかというと#3寄りの感覚だ。


やはりバンブーロッドは初めてでもフライを30年やっているだけに鋭い感覚を感じさせる。実はこの一本は、3、4人のバンブーロッドを持っているフライマンが、買おうかなどうしようかなと、目をつけていたバンブーロッドだった。かれこれ5時間はバンブーロッドの説明というか話をしていたようだ。


お客さんが「そうそう、たわらやの味噌饅頭を買いたいのですが」と言うので近いから歩いて行きましょうか。それに歴史が好きだと言うので、ちょっと、なにか私が面白そうな所を案内しましょうか?


「ぜひ」とお客さんも言うのでちょっとお店にカギをかけて、お客さんもカメラを持って、さっそく近所の小さい道祖神を案内した。草に隠れて分からないような道祖神だが、お客さんは気に入ってくれたようで、シャッターを切っていた。それから宗徳寺の境内を案内してすぐたわらやだ。のれんをくぐって、たわらやの若おかみがいたので「ジョイでーす」と言ってみた。


「小板橋さん、ヤダ〜ン」


すると若おかみはニヤニヤして、居合わせた女性のお客が「ナニナニ」と言っていた。実は幾日か前のお昼の4チャンネルで、ジョイという外国人のタレントが、バスを乗り継いでルーレットに矢を当ててまた次の町に行くという番組をやっていた。私はたまたま見たら、たわらやの若おかみが出ていて、味噌饅頭をジョイさんが旨そうに食べていた。ので、私はテレビを見ましたよということで「ジョイでーす」といきなり言ってみたわけです。


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すると、「小板橋さん、ヤダ〜ン」と恥ずかしそうに右手を口に当てていた。味噌饅頭ありますか? あります。するともう一人の店員さんが出て来て、「小板橋さんおいくつ」と言うので「俺じゃないよ。うちのお客さんがたわらやの味噌饅頭を食べてみたいというので、二人で歩いて来たわけなんだ」と言うと、女性の定員さんが「ちょっとお味噌が出てしまったものなのですけど」と、二つ味噌饅頭を私に手渡してくれた。


若おかみが、さっと二人にお茶を出してくれた。ジョイでーす、がうけちゃったかな? 私が「味はどうですか」とお客さんに聞くと「美味しいです」と言ってくれた。お客さんが「味噌饅頭何個ください」と注文してくれた。


帰り道にお客さんが「これで家族にいいお土産が出来た」と言ったので、私が「また釣りに出る時に奥さんに気持ちよく出してもらえるのではないですか?」と言った。お客さんの笑みが何ともいい感じだった。


「私は中山道の釣旅をもう3回も読んでいます」


するとお客さんが「私は中山道の釣旅をもう3回も読んでいますから、小板橋さんの人柄はよ〜く知っていますから」と言う。ドキ。最近さぼっていませんか? ドキドキドキン〜。するとお客さんが私に「握手をして下さい」と言った。


私は慌てて、「ど田舎の親父ですからそんな握手なんていわれたことも無いし恥ずかしいな。そんな握手をして下さいなんていう人物ではないです」。でも、ということで、大変恥ずかしいが握手をさせてもらった。


お店に帰ると、もう午後3時はすぎていたかな? するとお客さんが「日釣券をください」。「エ〜。これからまさか竹フルールの白戸バンブーロッドを使って釣りをするんですか。帰りが大分遅くなりますよ。」


と言ったところで、お客さんはもうバンブーロッドを試したくて心ここにあらずだ。「小板橋さん、この辺のいい渓流を教えて下さい。」「この辺は大きい魚はいませんよ」。それでもということで、川への下手な地図を書いた。絶対帰りが遅くなりますよと念を押して、もう一つの川への地図を手書きした。いい釣りが出来ますように、と送りだした。


30年フライフイッシングをやられている方でも、いきなり竹フェルールの#2/3は大変だろうなという思いが、私の頭の中にふわふわしている。


もう午後7時近かったかな、電話が鳴った。


「小板橋さん、先ほど白戸バンブーロッドを買った者ですけど」


ちょっと嬉しそうに「最初に教えてもらった渓流で」と言うので、私は「分かりましたか」と聞くと「すぐ分かりました。それでですね、バンブーロッドに慣れるのに30分ぐらいかかりましたが、もうやめようと思っていたら、来ちゃったんですよ」「ヤマメですか?」「エエ、18センチぐらいのが」。


魚をかけられただけでも大したもんです


「よかったですね」「でも意外と距離が近くて、ぽろりと外れちゃったんですよ」「#2/3の竹フェールールを初めて渓流で使ってアワセるのは至難のワザですよ、キャステイングだけでも大変なんですから。魚をかけられただけでも大したもんです。凄い凄い。どうだったですか」「うれしいし、楽しかったです」


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「魚は私の足もとを何匹も横切りました。魚はいました。いま横川のサービスエリアで電話をしています。これからそばを食べて帰ります」「遅くなると思うので気をつけてお帰り下さい」「じゃー」。


それから9日ぐらいした午後、お店に電話があった。ちょっと申し訳なさそうな声で「この間、白戸バンブーロッドを買った者なのですが」と言う。この間のお客さんだ。


「いま神流川に来ているのですが、小板橋さん、釣り始めてすぐ、27.5cmのヤマメがこの間の白戸バンブーロッドで釣れました。ロッドが弧を描いて物凄かったんですよ」。それはすごい。「#2/3の竹フェルールでは満月のようじゃなかったですか?よく取り込めましたね」。


魚とのやり取りを楽しめた、というよりは、昂奮冷めやらないという感情が、携帯電話から私にも伝わって来る。いつしか私のテンションもお客さんと一緒に盛り上がっていた。そうそう釣ったフライはなんですか。プードルです。何番ですか。#18です。


お客さんに対して嫉妬心というかヤキモチを


「それから小板橋さん。午後には31cmのヤマメを釣っちゃたんですよ」「エェーえ、ほんとですか〜? 白戸さんの竹フェルール・バンブーロッドでそんなにいい思いをしていいのですか。」と、心の中でお客さんに対して嫉妬心というかヤキモチを焼いている自分に、はっと気がついた。なんて情けない人間なんだ、いい歳をして修行が足りない。お客様申し訳ない。


「そうそう、引きはどんな感じだったのですか?」「27.5cmの方が水深があったせいか楽しかった。31cmの方は浅かったせいか意外とすんなり魚が寄って来た感じでした。フライはCDCソラックスダン#17です。小板橋さん、私は写真を100枚ぐらい魚を撮りましたよ」「エ〜。100枚ですか、ほんとですか〜」。


凄い凄い。私が嫉妬心を抱くよりお客さんは何十倍も昂奮したみたいだ。


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「小板橋さん。お願いがあります。バンブーロッドを作ってくれた白戸さんに良くお礼を申し上げて下さい」と、何回も繰り返して言われた。それに「白戸さんのバンブーロッドを大切に、大切に使わせて貰います」とも言ってくれていた。


私がお客さんに「今日はいい日だから、これからまだまだ釣りをするんでしょう」と聞くと、「いつもは暗くなるまで頑張っちゃうんですけど、今日は素晴しい釣りが出来たので、もう帰ります。それから、そのうちに写真を持ってお店の方に伺います」と言ってくれた。


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それから幾日かして、神流川の写真を持って来てくれた。7枚のヤマメの写真と1枚の釣れたCDCソラックスダン#17の写真が、A3サイズのクリアケースに美しく入っていた。スミスのベストに高そうなリールがあり、メインに白戸バンブーロッドノードレス・竹フェルール#2/3 7フィート2インチが、大変いやらしいいい方になるが、これで29,500円だと、だれが思うだろうか? もうホ〜ォ〜と息を呑むしかない。


後の写真が落ち着いて見られそうです。ふーう


ランディングネットの色もオリーブでベストと同系色だ。下に敷いてある生地は奥さんから借りたといっていた。木のテーブルか分からないが、重量感と厚みを感じさせる。2枚目の写真は、バンブーロッドの焼色がノードレスの斜めの所の色の濃淡と、フラッシュの光、トップ側の色の対比がとても美しい。2台のリールとアルミのフライボックス、ティムコのリーダークリッパーのブラックの使いこんであるのが添えてあるのも、にくい小物の演出だ。


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ここまで見せられたらもう聞くしかないよな、「すいません、申し訳ないんですけど差しつかえなければ、どんな職業につかれているのですか?」「カタログなどの写真の関係です」「そうですよね、プロですよね」。


それを聞いて、後の写真が落ち着いて見られそうです。ふーう、プロの写真の美しさ、背景の撮り方、魚とお水と波の輝き。とてもいいものを見せてもらった。マイリマシタというしかない。CDCソラックスダン#17のフックのボディーの下のハックルのカットのさじ加減といい、こんなことをいうとお客さんに怒られそうだが、私の性格と真逆の完璧主義なのだろうか? これは褒め言葉です。


「小板橋さんと白戸さんに、私からプレゼントがあります」「な、な、何ですか?」「今見た写真はもちろんですが、ちょっと小さいですが白戸バンブーロッドと尺ヤマメのアルバムを2人に差し上げます」「え〜、いいんですか?」。


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さっそく見せてもらう。オ〜、きれい。ヤマメも美しい。その場の臨場感が、明るくキラキラ輝いて私の胸に飛び込んでくる。釣り場から電話をくれたときの素直なほんとの気持ちが、プロとはいえこのアルバムに余すところなく表現されている。20頁に渡りうまく構成されている。見せられた私が今度は舞いあがっている。


最後のページに「白戸バンブーロッド・トンキンケーン・7フィート2インチ・#2/3。アンクルサムにて購入。9日後に神流川本谷へ。入渓直後に9寸ヤマメ、退渓直前には尺ヤマメを釣りました。満月状態の竿に昂奮の頂点、至福のひと時でした。我が愛竿にただただ感謝です!」と書いてくれてある。


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OK、OK


今回は釣りがメインということでお店に寄ってくれたのだが、私が嬉しくてついつい長話になってしまった。また午後1時を回ってしまい「どうも話が夢中になると時間を忘れてしまい、釣りする時間を削ってしまいました。申し訳ありません」と言うと、「小板橋さん、何を言うんですか。私はまだまだ話たりません」。でも釣りする時間がと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。今日も日釣券を買って、渓流に出かけて行った。いい釣りが出来ますように。


またお客さんのことだから電話を入れてくれるかなと思っていたら、けっこう遅くなって電話が鳴った。


「小板橋さん、最後の方で21cmのヤマメが釣れました」。私は「この近くには神流川本谷の様な大きいヤマメはいないですけど、21cmはまあまあいい型ですよ」「楽しかったです。今ウェーダーを脱いでいるところで写真も撮りました」。


やー、良かった、良かった。気を付けてお帰り下さい。


私も大阿呆でおだてりゃ木にのぼる方で、さっそく用も無いのに白戸さんに電話を入れて「お客さんが白戸さんの竿でいい釣りが出来たので、そのお礼にと20ページもあるとてもきれいなアルバムを白戸さんにプレゼントしてくれました。私が預かっていますから」と言った。


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すると白戸さんらしく電話の向こうで、素直に照れて嬉しそうにしている笑顔が見えるようだ。


白戸さんは言った。


「12月に何本か竹フェルールを持って行けると思います。小板橋さん、その時また竹を取りに一緒に行ってくれますか」。


OK、OK。



フライの雑誌102号に広告を出した白戸ロッドの竹フェルール5本が全部完売してしまった。イヤラしく思われたら申し訳ないが白戸さん、凄い。12月に竹フェルールが何本かまた入荷します。お楽しみに。


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小板橋伸俊(アンクルサム/群馬県安中市松井田町)


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posted by furainozasshi at 13:22| 中山道の釣り旅